<スナック キズツキ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第7話ストーリー&レビュー
第7話のストーリー
→「スナック キズツキ」画像ギャラリーへ
今回スナック キズツキを訪れる客はサトちゃん(塚地武雅)の母、佐藤ヨシ子(丘みつ子)。独身の息子を心配する一方で、夫に先立たれ、友人とも疎遠になり、どこか孤独な日を過ごしている。今回の店主トウコ(原田知世)のおもてなしは、トウコのアコーディオン演奏に合わせて歌うシャンソン!? 「人生何が起きるかわからない」。初めてのスナックで、初めてオニオンスープを食べる。
第7話のレビュー
誰かに縛られるのは嫌なのに、自由って時々苦しい。
「時間が有り余るようになったら、やりたいことも、一緒にやる人も、いないなんてねえ」
今夜の「スナック キズツキ」は、そんな7人目のお客さん・ヨシ子さん(丘みつ子)の言葉が胸に刺さる回だった。
5年前夫に先立たれ、中年の息子と二人暮らしを営むヨシ子さん。ちなみにその息子は第3話のサトちゃん(塚地武雅)、結婚して今は離れて暮らす娘が第6話の香保さん(西田尚美)だ。
どちらもすでに立派な大人だが、やはり母親として心配事は絶えない。特にサトちゃんは独身で、家事全般はヨシ子さんが背負っているため、「もし自分がいなくなったら?」と不安に思っていた。
そんなヨシ子さんを見かねて、香保さんは言う。「いつまでも世話焼いてないで、お母さんも好きなことしたら?」と。だけど、今更もうやりたいことなんてないし、友人ともいつの間にか疎遠になり一緒に何かを楽しむ人もいない。
ヨシ子さんの砂埃みたいに降り積もる傷は、以前トウコ(原田知世)のスナックを訪れる前に香保さんが抱えていたものと少し似ている気がした。人は学校を卒業すると就職したり家庭を持ったり、それぞれの“役割”を与えられる。人生は長いようで短くて、忙しく日々を送っていたら、あっという間に歳を重ねてて。
子供たちが巣立ち、仕事も定年を迎える頃にようやく長年縛られてきた“役割”から解放される。時間にも余裕ができる。だから多くの人は理想の老後ライフを思い浮かべているけど、いざその時になってみると案外ヨシ子さんのように空っぽのような気持ちになるのかもしれない。
そんな時、ふらっと立ち寄った「スナック キズツキ」でヨシ子さんの人生は再び色づくことになる。もちろん、何か劇的な出会いや出来事があったわけじゃない。
初めて訪れたスナックで飲む初めてのオニオンスープと、トウコのアコーディオン演奏に合わせて歌うシャンソン。トウコ流のシュールなおもてなしは、ヨシ子さんにとって全てが新鮮だった。
♪〜自治会の帰り道、路地裏のスナックに一人で入って初めて会った人の前で歌ってる(ヨシ子)
♪〜人生何が起きるかわからない(トウコ)
♪〜そうよ思いがけないことばかり、退屈なんてしてられないわ(ヨシ子)
行き当たりばったりで作ったものなのに、なんて素敵な即興ソングなのだろう。どことなく哀愁は漂っているけれど、けっして“可哀想”じゃない。
人生は思い通りにいかないことばかりで、「こんな筈じゃなかった」と思うこともある。だけどまたヨシ子さんのように、細く長く続いた道の先で人生を輝かせてくれるものにバッタリ出会うこともあるのだ。
ヨシ子さんはトウコにシャンソンのチケットを貰い、自分と同じように夫に先立たれ、独身の娘と二人暮らしの女性を誘う。子ども同士をお見合いさせるのではなく、自分たちが友達になることにしたのだ。
「久々にレコードを聴こうと思って」と嬉しそうに話すヨシ子さんの笑顔と、その横顔を見つめるサトちゃんの優しい表情が何よりのベストシーンだった。
※この記事は「スナック キズツキ」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
→目次へ戻る
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
©『スナック キズツキ』製作委員会