<スナック キズツキ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第12話ストーリー&レビュー
第12話のストーリー
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スナックには『本日休みます。』の張り紙。店主トウコ(原田知世)は法事のため実家に帰っている。思い出の場所と共に、亡き父のことや夢半ばで諦めた漫画家時代に思いを馳せる。スナックキズツキ今日のお客さんは、まさかのトウコ自身。偶然居合わせたこぐま屋さん(浜野謙太)にオムライスを振る舞い、自分やお客さんの日々のモヤモヤを音楽に乗せてデュエット!スナック キズツキは今夜もきっとどこかで営業中。心温まる最終話!
第12話のレビュー
♪ 街のどこかの小さなスナック
路地を進んだずっと奥 キツツキの絵が目印さ
あなたの話を聞くために きっと今夜も営業中
日々の生活の中で傷ついた人がふと立ち寄りたくなる「スナック キズツキ」。クリスマスイブの夜に放送された最終回では、心の傷をそっと癒すトウコ(原田知世)の優しい歌声がプレゼントされた。
「本日休みます。」の張り紙を残して、久しぶりに帰省したトウコ。目的は若くして亡くした父(村松利史)の法事に参加するため。父が営んでいた実家の洋食屋は姿かたちを変えず、トウコの帰りを待っていた。
どこか懐かしい佇まいや、居心地の良い雰囲気はキズツキに似ている。ふとカウンターの棚に目をやると、そこにはかつて漫画家だったトウコの作品や賞状が飾られていた。娘の活躍を喜んだ父と母がお客さんに自慢したくて飾ったのだろう。ここは、夢を追いかけていたトウコが机に向かってペンを走らせていた思い出の場所だった。
あっという間に時は流れ、母(稲川実代子)から手渡されたのは一通のハガキ。新人漫画家のトウコを支えてくれた当時の担当編集が退職する知らせだ。
漫画雑誌で連載を持たせてもらい、夢に邁進していたトウコだったが、その矢先に父が病で倒れた。看病のために週末は東京から実家に帰るという忙しい日々を送りながらも、必死で漫画を描き続けたトウコ。しかし、無情にもそんな彼女に担当編集から連載打切りが告げられる。
「夢って、叶っただけじゃダメなんだ。離れないように背中にくくりつけて歩き続けなきゃなんない」
以前トウコがポツリと呟いた言葉の意味がようやく分かった。漫画家をはじめ、多くの人が夢見る職業は競争率が高い。活躍の場を獲得するため、心休む間もなく常にライバルと競い合わなきゃならないのだ。
連載終了からしばらくして父が亡くなり、トウコは夢を手放した。
そして5年前、トウコは立地が悪くて長らく買い手がつかなかった「スナック キズツキ」に出会う。実家の洋食屋みたいで、初めて訪れたとは思えないその場所でトウコはお店を開くことにした。
子育てがひと段落して孤独を感じていた主婦、学生時代を謳歌する女子高生、夫に先立たれて暇を持て余す老女、父と母を早くに亡くし二人きりで生活を営んできた兄弟……。
そこには意図せず、傷ついた人たちが集まってきた。誰かに話を聞いてもらいたい帰り道、なぜか目に留まる「スナック キズツキ」の看板。控えめな佇まいだけど、不思議と誰もがお店に吸い込まれていくのは彼らとトウコの傷が呼応したからかもしれない。
思い出の香りを胸いっぱいに吸い込んでトウコが東京に戻ると、お店の前にはいつものようにこぐま屋さん(浜野謙太)がいた。お昼を食べ損ねた彼に、トウコはオムライスを振る舞う。ケチャップライスがきちんと卵に包まれた昔ながらのオムライスは、トウコが東京に旅立つ日、父が作ってくれたものだ。
「まだまだ伸び代があるってことで」。そう言ってトウコはオムライスのてっぺんに、お子様ランチのような旗を立てる。
ここまではトウコがお客さんをもてなすいつもの光景。だけど実は、トウコが今日のお客さん。お腹いっぱいになって満足したこぐま屋さんにマイクを渡され、トウコは冒頭の曲を歌う。
透明感あふれる優しい歌声はこれまで訪れたお客さんたちの心に寄り添うだけじゃなく、トウコ自身の人生を讃えているようにも聴こえた。
誰のことも傷つけず、誰にも傷つけられない人生なんてどこにもない。みんな何かしら心にモヤモヤを抱えていて、それは日々の疲れとなり蓄積していく。大したことないと思っていても人間とは不思議なもので、心の傷は時に命をおびやかしかねないのだ。
そんな中、ほっと落ち着け、気持ちをいろんな方法で発散させてくれるトウコのスナックはRPGの回復ポイントみたいだった。そして、このドラマも。ゲームをクリアする魔法は使えないけど、また旅へ出られるように疲れ切った心と身体を癒せる場所。トウコの傷も、笑顔で帰っていくお客さんを見送る度に小さくなっていったのかもしれない。
体力を回復しては旅に出てを繰り返すことに何の意味があるのかはわからない。でもある日、思わぬプレゼントが落ちてきたりもする。トウコが帰った実家で、自分が描いた漫画のファンだという女の子に出会ったように。
スナックのカウンターで、久しぶりにトウコは漫画を描き始めた。タイトルは「スナック キズツキ」。この物語はトウコがお客さんとの出会いを綴ったエッセイだったのねと、微笑みが溢れる最終回だった。
(文:シネマズ編集部)
※この記事は「スナック キズツキ」の各話を1つにまとめたものです。
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