<スナック キズツキ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第8話ストーリー&レビュー
第8話のストーリー
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今回スナック キズツキを訪れる客は香保の同級生の南裕子(堀内敬子)。言うことを聞かない子供たちにも、ヘルパーの仕事でもモヤモヤがたまる日々…。今回の店主トウコ(原田知世)のおもてなしは、なんと“タップダンス”!おいしいシュークリームとコーヒーに癒され、「感謝の言葉が欲しいわけではないけれど、誰かにわかってもらいたい」という気持ちを、タップにぶつける。
第8話のレビュー
トウコ(原田知世)が店主を務めるスナックには、いつも傷ついたものたちが訪れる。言いたいことが言えなくて損ばかりしている人、不確かな将来に焦燥感を抱えている人、歳を重ねて自由になった途端、孤独感に襲われた人。
それは他人から見れば、取るに足らないような痛みかもしれない。普段なら日常の中にそっと溶け、消え入るようなもの。だけど、彼らはふと立ち寄った「スナック キズツキ」で抱えた傷を“成仏”させる。誰もがお店を出るときには、まるで憑き物が落ちたような顔をしているのだ。
でも、これまでのストーリーを思い出してほしい。トウコは一度だって、訪れた客の事情に深入りしたことはなかったじゃないか。占い師のようにズバリ相手の悩みを当てたり、目から鱗が落ちるようなアドバイスをしたり、はたまた「辛かったねえ」と相手の気持ちに寄り添ったり。そんなことは一切せず、ただ「今日もお疲れさん」と丁寧に作ったドリンクと食べ物を振る舞う。まるで実家にいる母のように。
その雰囲気に癒されながらも、トウコが面白いのは多少の“強引さ”も併せ持っているところ。突然朗読やしりとり、ピアノセッションなどに客を誘って、断る間もなく自分のペースに引きずり込んでいくトウコ。そして意図してかせずかは分からないが、戸惑っていた客も流れに身を任せている間に砂埃のように溜まったモヤモヤを吐き出していく。
第8話で登場したのは、パートで働きながら家事や子育てに追われる南さん(堀内敬子)。子どもたちは言うことを聞かないし、ヘルパーの仕事で伺った家でも邪険に扱われる。朝から晩まで働きづめ。そんな時、立ち寄ったスナックでゆっくりとアイスコーヒーとシュークリームを味わった南さんは知らぬ間に涙を流していた。
そこで何も聞かず、そっとティッシュを差し出すトウコの行動が印象的だ。南さんに専用のシューズを履かせて、タップダンスを一緒に踊るトウコは『シンデレラ』に出てくる魔法使いのよう。感謝の言葉が欲しいわけではないけれど、誰かにわかってもらいたい。そんな地団駄を踏みたくなるような気持ちを、南さんはタップにぶつけた。
「スナック キズツキ」は客と視聴者にとって、溜まった鬱憤を次の日に持ち越さないようにするための場所。前半のゆったりした時間に癒されたら、後半は我慢しがちな自分を思いっきり解放する。
お店を出たらそこには全く変わらない世界があり、現実は容赦なく続いていくのだろう。だけど胸のつっかえが取れ、また新たな自分で一歩を踏み出せるような気がする。そんな不思議な力が、この場所には存在するのだ。
最終回までもう少し。この物語が幕を閉じても、おそらくトウコは私たちの知らない場所でひっそりとスナックの看板を出している。
※この記事は「スナック キズツキ」の各話を1つにまとめたものです。
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