2021年12月18日

<新作レビュー>『世界で一番美しい少年』そう呼ばれた男の苦悩の半世紀。ファンは対象の内面をどこまで理解できている?

<新作レビュー>『世界で一番美しい少年』そう呼ばれた男の苦悩の半世紀。ファンは対象の内面をどこまで理解できている?


母と父、自身の家族への
忸怩たる想い



『ベニスに死す』の後の1970年代前半のビョルン・アンドレセン人気は、確実に彼の心をどこか捻じ曲げ、追い込んでいきました。

特に「世界で一番美しい少年」というアイコンは、もともと明るく健康的だった少年に多大なストレスを与えてしまったようです。

そして映画は後半、ビョルン自身の母親の死と、未だに誰かわからない父の話、そして自分自身が良き父親になれなかった忸怩たる想いなどが切々と綴られていきます。

そうした苦悩が、『ベニスに死す』の頃からは想像もつかない現在の老いさらばえた姿に象徴されるかの如く画面に映し出されていきます。

アパートを追い出されようとしていたり、現在の恋人からはブタ呼ばわりされるなど(風貌そのものはガリガリなのに)、まるで良いことなどないかのような彼ですが、一方では白髭&白髪の細身姿から醸し出される哀愁は、美少年時代にはない自由な人間そのものとしての魅力が感じられるのも確かなのです。

本作の日本公開に寄せた彼のメッセージの中で「本当に好きな国」と、久しぶりに日本に帰って撮影できたことを喜んでくれているのも、正直嬉しいものがありました。
(パンフレットの中にも掲載されていると思われます)



当時は大変な想いをしてはいても、池田理代子はもとより真摯なファンの存在は、やはり彼にとってありがたいものであったことも、今では深く認識してくれてくれているのでしょう。

その伝では、アイドルであれタレントであれ何であれ、すべからくファンとはそういう存在であってほしいもの……。

そういった想いまで喚起させてくれる作品でもありました。

劇中では正直痛々しく聞こえてきたもののエンドタイトルでは不思議と胸に響いてきた、彼が日本で発売したレコード〈永遠にふたり〉、ちょっと中古屋とか探してみようかな。

(ちなみに彼は今も歌えるようです)

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(文:増當竜也)

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(C)Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021

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