<2021年の映画音楽たちベスト10>胸を高鳴らせたのはコレだ!


3位『DUNE/デューン 砂の惑星』より「House Atreides」/ハンス・ジマー


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かつてデヴィッド・リンチ監督も映像化したフランク・ハーバートのSF小説を、『ボーダーライン』『メッセージ』などで知られるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が再び映画化した『DUNE/デューン 砂の惑星』。

砂の惑星デューンこと惑星アラキスを舞台に対立するアトレイデス家とハルコンネン家の壮絶な戦いを、ヴィルヌーヴ監督のビジョンが冴えわたる圧倒的なビジュアルセンスで描き上げた。

音楽を担当したハンス・ジマーは筋金入りの原作ファンであり、自身がその作曲を担当する日を夢見てこれまで映像化された作品を観ていなかったほど。ついに念願叶ったジマーの本作に対する熱量は近年稀に見るほどすさまじく、3種類のサントラとトレーラーミュージックをリリースしている。本編版サントラもさることながらスケッチブック版の聴きごたえも抜群なので、本編に使用されていないのが本当に惜しい。

特に本編でも印象的なバグパイプのサウンドをたっぷり堪能できるのが今回選んだ「House Atreides」。13分55秒にもおよぶ大作だが、その約3分の1を使って延々とバグパイプとドラムリズムが鳴り響くパートがある。アトレイデス家の権威と威厳を象徴する佇まいであると同時に、ジマーらしさを存分に味わえる1曲だ。

本編サントラのバグパイプに物足りなさを感じた人には、ぜひともこの楽曲をおススメしたい。



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2位『ベイビーわるきゅーれ』より「最後のタイマン」/曽木琢磨


(C)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
鑑賞後、これほど爽快な気持ちで劇場を後にできるアクション映画(しかも邦画で)はそうそう出会えないのではないか。

そんな気分にさせてくれる阪元裕吾監督の『ベイビーわるきゅーれ』は、女性暗殺者コンビのクールなアクションとオフビートな会話をバランスよく両立させた奇跡的な作品といっても過言ではない。そんな映画は記憶をたどっても見つからず、観客から絶大な支持を受けた意味も納得できる。

最後のタイマン」というタイトルからもわかるとおり、本曲はクライマックスの伊澤彩織vs三元雅芸による壮絶なファイトシーンに用意された楽曲。2人のタイマンは今年屈指のアクションシーンでもあり、今後製作される邦画アクションの新たな指標となったのではないだろうか。

従来のアクションと比較しても格段に手数が多く、そのスピード感は瞬きすることすら許されないほどだ。そんなシーンを支える楽曲もまた躍動感にあふれ、エレキギターにストリングス、ドラムリズムが畳みかけてくるサウンドはハリウッド級。映像と音楽がぴたりと合致することで生まれる相乗効果が抜群に高く、クライマックスを飾るに相応しい1曲となった。

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1位『うみべの女の子』より「Girl(on the shore ver.)」/world's end girlfriend


(C)2021「うみべの女の子」製作委員会
浅野いにお原作・ウエダアツシ監督の『うみべの女の子』は、筆者が今年鑑賞した映画の中で最も大きな余韻を残した作品。

中学生男女の思春期を大胆な性描写も含めながら描いた点はもちろん、主人公の少女・佐藤小梅というキャラクターに感情移入すればするほど彼女が迎える結末に胸を締めつけられてしまうのだ。

小梅はかつて告白してきた同級生・磯辺恵介に取り返せない青春を捧げるかたちになり、“好き”でもなかったはずなのに彼女の中で磯辺という存在が膨れ上がっていく。演じる石川瑠華と青木柚の演技力もあって小梅と磯辺がスクリーンの中で確かに息づいているからこそ、その余韻はいつまでもずしりと胸にのしかかる。

やわらかく優しげなトーンで始まる「Girl(on the shore ver.)」は、エピローグからエンディングにかけて流れる楽曲。ストリングスの美しい音色が新たな目標を見つけて笑顔を見せる少女の成長を祝福する一方、やがて生じるノイズが彼女の背負った業のように思えてならない。

どれだけ少女が肉体的・精神的に美しく成長しようと、そのノイズは観客に植えつけられた余韻のようにいつまでも深く強く鳴り響き続ける。ああ… 曲を聴くだけで、物語を思い浮かべるだけで切ない。これも青春の呪いというやつの1つなのだろうか。

ちなみに本曲はこの映画のために作曲されたわけではなく、2016年発表のworld's end girlfriendのアルバム「LAST WALTZ」に収録された「Girl」が原曲。アレンジが加えられているとはいえ映像と重なると「この曲以外は有り得ない!」と断言できるほどマッチしていて、逆に「Girl(on the shore ver.)」以外の楽曲が使われていたなら映画(と余韻)の印象は違うものになっていたかもしれない。



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まとめ

案の定アクション系のスコアに偏りはしたものの、まさか『うみべの女の子』にもっていかれるとは筆者自身も予想外だった。

作品そのものと同じように映画音楽も個々人の感性で受け取り方が変わり、どんなサウンドやメロディが琴線に触れるかは誰にも予想できない。だからこそ映画音楽に耳を傾ける楽しみがあり、「これは」と思える楽曲に出会えた時の喜びはいつまでも忘れないでいたい。

現時点でわかっているだけでも、2022年の映画音楽・サントラも話題作が目白押しだ。

個人的にはマイケル・ジアッキーノの『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、ハンス・ジマーの『トップガン マーヴェリック』、RADWIMPSの『余命10年』、菅野祐悟の劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』、澤野弘之の『バブル』、渋谷慶一郎の『ホリック xxxHOLiC』、佐藤直紀の『GHOSTBOOK おばけずかん』あたりを楽しみにしている。映像とともに、どんな映画音楽が観客の心をワクワクさせてくれるか楽しみだ。

(文・葦見川和哉)

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