<らんまん・植物学者編(2)>21週~24週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第119回のレビュー
最終回を前に、南方熊楠、早川逸馬(宮野真守)、資産家・永守徹(中川大志)と、続々と重要人物が登場してきます。南方熊楠の神社合祀反対活動に興味を示す万太郎(神木隆之介)に、徳永(田中哲司)は「深入りするんじゃない」と釘を刺します。
大学は今度は満洲に植物調査に行く予定なので、その予算を国に出してもらうためには国の機嫌を損なうわけにはいかないのです。
なぜ、満洲なのか。日露戦争で満洲が戦場になっていたからでしょう。台湾のように日本が進出していくのに、植物調査も利用されていたのかも? 現地の様子を知る手がかりになりますから。
「すべてが失われる前に、君に託します」と野宮(亀田佳明)から手紙をもらった万太郎ですが、
徳永には「私もこれ以上はかばえない」「だからもう目立つな」と言われ、悩みます。
「すべてが失われる前に」というのは神社の周辺の森林が……という意味でしょうけれど、もっと意味が隠されているようにも感じます。
と感じるのは、その後、渋谷の山桃に、早川逸馬が渋谷開発のための商談に呼ばれてやって来て、寿恵子(浜辺美波)の夫が万太郎であることを知って、再会したときのセリフからです。
「自由とは己の利を奪うことじゃない、それやったら奪われたがわは痛みを忘れんき 憎しみが憎しみを呼んで行くところまで行くしかのうなる」
(逸馬)
自由民権運動を警察に咎められ逮捕され拷問された早川逸馬は、無事生き延びていました。でも、かつて自由のために戦っていたけれど「また戦いの世になってしまった」と嘆いています。そして、上記の言葉を語ります。
戦争や開拓、己の利ばかり求めて、人間は前進し、大きくなっていこうとします。神社合祀もその一環でしょう。誰かの利のために、そこで生きてきたものが損なわれてしまう。それでいいのか。
終わりに来て逸馬が出てきたのは、万太郎の初心の確認でしょう。なぜ、植物学をやっているのか、その根本がぐらついていないか、それを問うために、天が逸馬をよこしたのでしょう。
「あなたが人生でひとつだけ選ぶものはなにか」
(逸馬)
地位も名誉も関係ない、ただ、世にある植物を等しく紹介したい。でもその純粋な思いはなかなか通りません。どうしても地位や関係性に縛られてしまいます。そこで、逸馬は、資産家・永守を万太郎に紹介し、いよいよ植物図鑑出版の道が開けてきました。
ご都合主義ぽい展開のようにも思えますが、万太郎がたったひとつのことだけやってきた、それが実を結ぶという寓話なのです。
話を戻します。徳永は、留学から帰ってから人が変わったようにドライな人になったかと思いきや、やっぱり万太郎を守っているようで。
大学に勤める者の妻が水商売をやっていることが由々しき事態であるという意見が出ても、抑えているようです。この件は、モデルの牧野富太郎も実際、指摘されていたそうです。
社会に出ると、徳永みたいに、その時、その場での適正を考えて行動している人が時々います。田邊(要潤)のように偏りがなく、バランスをとっている、世渡り上手です。
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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