映画コラム

REGULAR

2017年10月06日

『あゝ、荒野』 菅田将暉の濡れ場に興奮し、魂を削り取るような拳闘に圧倒されろ!

『あゝ、荒野』 菅田将暉の濡れ場に興奮し、魂を削り取るような拳闘に圧倒されろ!



3:大迫力のボクシングシーンを見逃すな!役者とスタッフの魂を削るような熱量を感じろ!




©2017『あゝ、荒野』フィルムパートナーズ


本作の物語は、正反対の2人の男がボクシングに出会い、お互いに“違う道”を進みつつも、時には衝突し、または高めあっていくというもの。名作マンガ「あしたのジョー」や、北野武監督の映画『キッズ・リターン』を思い出す方も多いでしょう。

そのボクシングシーンの迫力、命をぶつけ合うかのような惨烈さは、特筆に値します。まったくの素人であった2人が、徐々にボクサーとして“出来上がって行く”過程がとてもリアルであり、そのパンチやフットワークは「本物のプロボクサーにしか見えない!」と思えるほどなのですから!

菅田将暉の役作りも、並大抵のものではありません。もともと細身だった彼は本作のために“増量”を開始、本番の一週間前まで炭水化物を減らしていき、以降は完全にカット。そして試合の前日からすべての飲食を解禁して、撮影当日に体のキレが最高の状態になるように調整をしていったのだとか……いや、それもう、俳優というより本物のアスリートのやり方じゃないか!

対するヤン・イクチュンは、菅田将暉とは逆に“減量”を開始。ジムのロケセットの中で、真夏にサウナスーツを着込んで、電気ストーブの前に座って、増量をしている菅田将暉の体重に合わせていったのだとか……いや、それもう、まさに「あしたのジョー」の力石徹じゃないか!

前述した菅田将暉と木下あかりの濡れ場もそうですが、本作『あゝ、荒野』は撮影時の環境が、作中の物語やキャラクターに絶妙にシンクロしているのです。彼らの演技が、もはや演技でなく、ドキュメンタリーのように、実在している人間のように“本物”に見えるのは、役者のこれ以上のない努力の賜物でしょう。

さらに、菅田将暉は本作『あゝ、荒野』について、以下のように語っています。

「こんなに男の涙が見れる映画は無いと思います。魂を削り、魂を吸い取られ、魂を与え、魂を受け取った作品です」

まさに、本作は役者たちの、魂の慟哭が聞こえてくるような本気、下手すれば彼らの寿命が縮んでいるじゃないかと思うほどの「何かを犠牲してまで最高の映画を作りたい」という、志が伝わってきます。

その役者たちの熱量を、カット割りを多用しない“長回し”で、余すことなく取り続けたスタッフたちの尽力も推して知るべきでしょう。拳闘のどの場面でも目が釘付けになり、まばたきをするのも惜しいほどの感動がある……。近年の『クリード チャンプを継ぐ男』や『ウォーリアー』に続き、またしても傑作と呼べる格闘技の映画が日本から生まれたことが、嬉しくて仕方がありませんでした。

※実は近未来の設定だったって本当? 次のページで解説します!

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