映画コラム

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2018年01月12日

『ゲド戦記』を深く読み解く「3つ」のポイント|なぜ父殺しをしたのか?宮崎吾朗が監督を務めた理由は?

『ゲド戦記』を深く読み解く「3つ」のポイント|なぜ父殺しをしたのか?宮崎吾朗が監督を務めた理由は?


2:“影”とはいったい何であるのか?




劇中、アレンは自身の“影”に怯えていましたが、終盤ではその影こそが、抜け殻のような存在になり、アレンの体を求めてさまよっている“光”であったことが明かされます。

原作小説における影は“心の闇の部分が実体化して襲ってくる”というシンプルな存在でしたが、映画の影はそれとはまったくの正反対のものとされているのです。その理由は、やはり前述した父殺しが冒頭で描かれていたためであるのでしょう。

実体となっている父を殺したアレンのほうが、実は影であり、衝動を抑えられない心の闇そのものである。そして、本来であれば共存してなければならない“光”から逃げている、というのは確かに納得できます。そして、心の闇が恐れていた光を受け入れる(同化する)ことができれば、前に進むことができる……ここにも、普遍的な若者へのメッセージが込められているのでしょう。

余談ですが、『ゲド戦記』の原作小説は世界中の物語に影響を与えており、あの『スター・ウォーズ』シリーズで内なる心の光と影の戦いが描かれているのも、その世界観を元に作られためだとも言われています。宮崎駿もまた、原作者のル=グウィンに「『風の谷のナウシカ』から『ハウルの動く城』に至るまで自作のすべてが影響を受けている」とはっきりと告げたこともあるそうです。

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(c) 2006 Studio Ghibli・NDHDMT

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