<ただ離婚してないだけ>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第4話ストーリー&レビュー
第4話ストーリー
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正隆(北山宏光)に捨てられたショックで雪映(中村ゆり)に包丁で襲いかかった萌(萩原みのり)。もみ合いの末、正隆は萌の腹を包丁で刺してしまう。どんどん広がっていく大量の血。警察に通報しようとする雪映だったが、萌は絶命。2人は遺体を裏庭に埋める。普段通り過ごすよう雪映に命じた正隆だが、萌の幻を見るようになる。狂っていく夫を見た雪映は「もうついていけない」と言い残し、病院へ向かう…。
第4話レビュー
ホラーじゃん、もうやめて…! と、何度か顔を覆ってしまう第4話だった。
床に倒れた萌(萩原みのり)を前に、「どうしよう、救急車…」「警察に」と取り乱す雪映(中村ゆり)。しかし正隆(北山宏光)は、「持てって言ってんだよ!」と声を荒げ、萌の遺体を運ぶのを手伝わせる。そして、遺体を庭に埋めはじめた。無計画な急展開に驚きつつ、こんなことってあっていいのだろうかと苦しくなる。萌の人生ってなんだったのだろう。土がかけられていく萌を見て、せめて、せめて目だけは閉じてあげてほしいと思った。
そして、1話の冒頭へと繋がる。血まみれのリビングで疲れ果てた正隆と雪映からスタートしたあの場面は、萌を埋め、そのまま精魂尽き果ててしまっていたところだった。
自身もかなりの重傷を負っているはずなのに、病院へ行けない正隆。たしかに、包丁を掴んでしまっていたから受診の口実も難しい。雪映に手当てをしてもらい、「何なんだよあいつ!」と叫ぶ。萌のした行動も常軌を逸していたかもしれないけど、あなた、もう少し人の気持ちを考えようか…。
挙句、「普段通り過ごすんだ」と、仕事へ行かせようし、雪映もそれに従う。正常な判断なんて、とてもできる状態ではないのだろう。出勤の際、ゆっくりと萌が埋められている場所を映す。これ、もうホラーの描写だ。ふわっと血だらけの萌が登場したりしないか、目を細めながら画面を見てしまった。(筆者、結構ホラーが苦手です)
一方、萌の家に帰宅する弟。そういえば、一緒に暮らしていたんだった。姉の不在にも特に違和感のなさそうな創甫(北川拓実)だったが、正隆との旅行で萌が買った飾りが風に揺れ、萌の声が重なる。その表情は、何かを感じ取っている様子だった。何だか一波乱ありそう。(ところでこのシーンの「創甫…」という萌の声、みんな聞こえてましたよね…?)
正隆も雪映も普段通りの生活を送ろうとするが、心ここにあらず。正隆に至っては何度もフラッシュバックを起こし、萌の幻覚を見る。生きた心地なんてしないだろう。
人を殺したショックに呑まれて、正隆の不倫のことはうやむやになってしまうのかと思ったが、雪映がついにしびれを切らす。
「あの子をめちゃくちゃにしておいて、殺したのよ…」「ついていけない」「もう無理」
雪映の感情がむき出しになった瞬間だった。正隆はこれに怒鳴り声をあげて反論するでもなく、無気力に、ただ街を徘徊するようになる。その表情は、正隆たちの家に乗り込んできたときの萌のそれと、ほとんど一緒だった。
萌に堕胎させておいて自分だけ産むことはできないと考えたのか、中絶手術の予約をしようとする雪映。あんなに子どもを欲しがっていたはずなのに。お願い、誰か止めて…と思うと同時に、止めたところで幸せなのかなと考えてしまう。八方塞がりって、こういうことをいうのだろう。
さらに、自首をしようと交番の前で立ち止まるも、その瞬間、正隆からのプロポーズを思い出す。「幸せにするから」と優しい笑顔でいう正隆と、やわらかく微笑む雪映は、絵に描いたような幸せの絶頂だった。ここから2人でもっと幸せになるはずだったのに。あの笑顔を、雪映はもう1度取り戻させたかったんだろうな。本当に、何でこんなことになってしまったんだろう。
どこまでいっても萌の幻覚に追いかけられる正隆。これはまるで勝ち目のない鬼ごっこだ。それでも日常を続けようとするが…
ついに2人で囲む食卓で、正隆の糸が切れる。静かに泣き出した正隆は、次第に嗚咽を漏らしはじめ、最終的には子どもみたいに 「ごめんなさい、ごめんなさい…」と声を上げて泣き続けた。(こんな泣き方、ちょっとズルいぞ北山さん、と思ったのは内緒)
何に対して謝っているのか、もうきっと本人にも分からないだろう。ただなんとなく、初めてちゃんと感情を開放して泣くことができたんじゃないかなという気がした。子どもの頃から居場所のなさを感じていたこと、社長になれなかったこと、萌の命を奪ってしまったこと…。
そういった不安や憤り、罪悪感、全部がごっちゃになった涙だった。こんな姿を見せられたら、雪映だって抱き締めるしかない。さらに、この状況で子どもができたことを告げる雪映。そのとき初めて、正隆の目の焦点が合ったように感じた。
そして、「頼む、一緒にいてくれ」と気持ちを伝える正隆。その言葉、本当はもっとずっと前に聞きたかった。ちょっとずつ前に進むかに見えたところで、すべてがぶっ壊れたこの非情な現実が辛い。
そういえば、今回これまで以上に正隆のセリフが少なかったんじゃないだろうか。それでも、正隆が発している様々な感情が伝わってきた。表情や涙だけで、こんなに雄弁に語れるとは。特に最後の泣きのシーンは動きのない数十秒から、静かに涙を流すのがすごく印象的だった。映像ならではの表現と贅沢な時間の使い方に、今は全部が間違ったところにあるけれど、ここが2人にとってのスタートを象徴しているように見えた。
やっと本当の意味で心を一つにできただろう2人。どうか一緒に、未来へ向けて建設的な行動をしてくれと願うばかりだ。
※この記事は「ただ離婚してないだけ」の各話を1つにまとめたものです。
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