【映画VS原作】『バトル・ロワイアル』原作と映画で異なる、魅せたかった“モノ”とは


小説と映画では、伝えたいことが離れていた

小説が刊行されると、翌年には深作欣二監督によって映画化された。原作の設定に加え「ねえ、友達殺したことある?」というコピーが作られ、今はなきブランドBA-TSU(こちらもすでにないがファッション雑誌「KERA」に掲載されていたブランドだ)が制服デザインを担当。

映画が公開された2000年当時、未成年による殺人事件がいくつか起こり「キレる17歳」という言葉が生まれた。映画の公開を危惧する事態となり、主人公たちと同じ中学生世代がほぼ観られないR-15指定となった。だが関連した報道がかえって話題を呼び、ヒットにつながったと言われている。

映画は、中学生たちの凄惨な殺し合いを実写化するという意味では成功していたと思う。だがいくつか残念が点があった。小説の中の比較的大事なエピソードが省略されてしまっているところが多かったのだ。


例えば、相馬光子と滝口優一郎のエピソードがそのひとつだ。相馬光子は、プログラムに積極的に参加し、数多くのクラスメイトを殺害した美しく恐ろしい人物だ。だが、彼女がそういう行動に至る過程には、凄惨な過去があった。幼い頃母に売られて複数人の男に強姦され、その後母を殺害。信頼していた小学校の担任にもレイプされるなど、悲惨なものだ。自らの経験から「奪う側に回ろうと思った」のだ。

小説では、初めて接することになった滝口の言葉に光子が心動かされるシーンがある。オタクで目立たない存在だった滝口だが、評判の悪かった光子を悪者と決めつけた友人・旗上を制し、一時は行動を共にすることになる(実際に数人殺した後なので、旗上の意見は当たっていたのだが)。

「もし悪い事をしてるんだとしてもさ、そうでもしなきゃいられないような、理由があるんだって。それは、相馬さんが悪いわけじゃないって。」という滝口の言葉に、一時的とはいえ光子は心を動かされたのだ。最終的に滝口は死亡するが「あなたちょっと、すてきだった。あたしちょっと、うれしかった。忘れないわ、あなたのこと」と、ほぼ殺人鬼だった光子が他人の言葉に心動かされたシーンは印象的で、小説でいちばん心に残ったシーンだった。

映画では滝口と光子のエピソードがどうなるか気になっていたのだが、血まみれで裸で横たわる男子生徒2人(おそらく旗上と滝口)の横で光子が服を着ているワンカットのみ……えええええ。滝口、セリフゼロなうえに光子の色仕掛けに乗って殺されたことになってるやんけ……

非常にがっかりした。もちろん映画の時間ですべてのエピソードを入れることは無理だと思うが、こんな大事なシーンをこれで済ませる? 小説版を読んでから映画を観た人、似た理由でがっかりした人は多かったのではないだろうか。

おそらく、作者が小説で書きたかったものと、監督が映画で撮りたかったものが違うのではと感じた。小説では極限状態の中での人の心の動き、映画は衝撃的な中学生の殺し合いに主軸が置かれていたのではないだろうか

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(C)2000「バトル・ロワイアル」製作委員会

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