<アバランチ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第10話ストーリー&レビュー
第10話のストーリー
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藤田(駿河太郎)は山守(木村佳乃)ではなく、羽生(綾野剛)の前に現れた。
3年前の偽装テロ事件以来の再会を果たした2人だったが、喜びもつかの間、羽生は自らの直感から大山(渡部篤郎)側にはつかないことを宣言する。かつての同志が、それぞれが信じる“正義”の食い違いによって、今は全く別の道を歩んでいることを感じた藤田は、「3年前、俺も含めて全員死んでいれば、お前と敵にならずに済んだのにな」とつぶやき、非情にも羽生に向けて銃弾を放つ。
一方、西城(福士蒼汰)は父・尚也(飯田基祐)の元を訪れていた。息子として、同じ警察官として、父の不正を許せない西城は、週刊誌記者の遠山(田島亮)と共に調べ上げた証拠を使って、尚也を告発しようとするが…。
それぞれが己の“正義”を信じ、最後の戦いへ――。はたして、アバランチが起こした雪崩の結末は?
第10話のレビュー
雪崩は、起きた。
藤田と対峙した羽生。藤田は発砲したものの、羽生の命は奪わなかった。二度と姿を現すな、とだけ言い残して。
明らかになったのは、藤田が今に至るまでの経緯。実は大山から偽装テロのことを聞かされていた。犠牲になる部下をただ見送ればいい、と言われていた藤田だったが、共に現場へと向かった。生き残ったのは自分以外には羽生ひとり。本当は、藤田は部下たちと死にたかったのではないか……。生き残った藤田は、部下たちの命が奪われた責任を共に負わされる。きっと、藤田は責任感が強い人間のはずだ。仲間を失った十字架をずっと背負っていくだろうし、裏切ることもできない。だからと言って、羽生を殺すこともできない。中途半端だと言われてたとしても、すごく、人間らしいように思う。
山守はアバランチのメンバーの命を守るため、大山に寝返る。全員に出頭するように求めるが、おとなしく聞き入れるような面々ではない。
まさかここで山守が裏切る? 巻き込んだのは山守なのに、そんなことあり得る? あり得るわけがない。「寝返ったように見せた」のもすべて作戦だった。
そして鍵となったのは西城。極東リサーチに武器を横流ししていた父・尚也に「正義」を突き付ける。尚也に自身の口から真実を明らかにしてほしい。もしそれが叶わないなら、自分が告発する。そう決意していた西城だが、尚也本人の口から語られなければ、もみ消されるだろう。きっと、尚也も分かっていたはずだ。尚也が真実を語る会見から“雪崩”は加速する。
尚也の会見と合わせて遠山が週刊誌で事件を記事化。世間でも話題になり始めるが、大山は歯牙にもかけない。彼にとって、国民の声などどうでもいいのだ。アバランチに全ての罪を着せて、自分は日本版CIAを作る。その野望を果たすまであと一歩。
そこで、梯子を外される。まさかの、総理大臣に。
大山は突如、内閣官房副長官を解任される。総理自身が羽生に話を聞き、下した決断だった。羽生は、藤田と対峙したときに、大山が黒幕であると話させ、その様子を記録していた。それが決定打となっていたのだ。
「国民の話を聞くのが総理の役目だからね」
「やりすぎちゃったね」
アバランチに誘拐され、どこか頼りなく、警察官にも顔を認識されていない総理。ここで大逆転ホームランである。
危機は去った。藤田がいたころの時間には戻らない。けれど、それぞれ前を向けただけでもアバランチの存在意義はある。
ところどころ、「アバランチ詰めが甘いのでは?」「極東リサーチ、非道になりきれないな!?」などと思ったけれど、それもまた人間だからだろう。藤田が羽生を殺せなかったのも、尚也が武器の横流しをごまかしきれなかったのも、人間だから。殺伐としているようで、意外と食事のシーンが多かったのもそんな現れなのかもしれない。
そして、人間の心を忘れると、取返しのつかない大きな過ちを起こしてしまう。
ハードでクールな物語だと思っていたが、実は誰よりも「人間の心」を信じていた作品だったのかもしれない。
(文:シネマズ編集部)
※この記事は「アバランチ」の各話を1つにまとめたものです。
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