<大奥>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第10話ストーリー&レビュー
第10話のストーリー
▶︎「大奥」画像をすべて見る吉宗(冨永愛)は、大岡忠相(MEGUMI)からの手紙と、村瀬(石橋蓮司)の死と同時に行方の分からなくなっていた没日録を受け取る。戻ってきた没日録を読んだ吉宗は、これまで隠されていた衝撃の事実を知ることに。その後、吉宗は将軍の座を家重(三浦透子)に引き継ぎ、後世へと希望を託すのであった…。
第10話のレビュー
光の多いところでは、影も強くなる。NHKドラマ10「大奥」は、その光と影のコントラストで私たちの心を揺さぶった。男子のみが感染し、ほぼ死に至る奇病・赤面疱瘡の蔓延で男女の役割が逆転した江戸。世を治める将軍職も三代家光以降、女性が担ってきた。彼女たちのために三千人とも噂される美男たちを贅沢に侍らせたのが大奥である。
目にも鮮やかな豪華絢爛な世界を舞台にしながらも、本作が描いたのは徳川の血を繋いでいくという使命のために尊厳を奪われてきた者たちの物語だった。
春日局(斉藤由貴)に攫われ、父・家光の身代わりとしての生活を強いられた千恵(堀田真由)。彼女は自分と同じように騙されて、大奥に連れてこられた有功(福士蒼汰)と恋に落ちるが、子ができなかった2人の仲は引き裂かれた。いくら心が有功と固く結ばれていようと、好きでもない男に抱かれ、子を儲けなければならないのはどれほど苦しかっただろう。
その娘である四代将軍綱吉(仲里依紗)も父・桂昌院(竜雷太)の期待に応えようと、毎晩心を殺して男たちと褥を共にした。その呪いを絶ったのが、「生きるということは、女と男ということは、ただ女の腹に種を付け、子孫を残し、家の血を繋いでいくことではありますまい!」という右衛門佐(山本耕史)の言葉だ。かつて自分も種馬としての扱いに苦しめられた彼が、世継ぎを産むという綱吉の使命を終わらせた。だが、2人は結ばれた直後に永遠の別れを迎える。
男子の数が少ない世の中で、美男三千人が集うとされた大奥は人々の憧れだった。だが、実際に大奥の中で渦巻いていたのは、ただ愛すべき者の側にいたいという願いすら叶わぬ孤独である。世継ぎを産み、育てるという大奥の目的を果たすために多くの人が自分の気持ちを押し殺してきた。同性である綱吉に思いを寄せていた吉保(倉科カナ)も然り。
そんな中、八代将軍に就任した徳川宗家の血筋ではない吉宗(冨永愛)は常に自分らしく生きてきた。千恵にとっての春日局、綱吉にとっての桂昌院のような存在はおらず、産めよ殖やせよと言われることもない。様々な改革や赤面疱瘡の撲滅に奔走する片手間に男たちを抱き、子を為す。決して搾取されない。むしろ彼女の方が無意識のうちに男たちを種馬扱いして、藤波(片岡愛之助)に諌められるほどだ。
そして晩年は、娘・家重(三浦透子)たちの父親代わりである杉下(風間俊介)と夫婦のような関係性を築いた。子種がないという杉下とは子を儲けることはできない。男女の関係も持つことはない。ただ、「一緒にいたいからいる」というそれだけのことだ。2人の関係は千恵と有功、綱吉と右衛門佐、そして吉保から見れば、羨ましくて仕方のないものであるだろう。
もちろん、吉宗の人生もずっと順風満帆だったわけじゃない。赤面疱瘡撲滅という成し遂げられなかったこともある。ただ多くの人に慕われ、自分の足りぬところを補ってくれる者たちと改革を成功させた。やり残したことだって、家重や龍(當真あみ)といった優秀な若者達に託すことができる。最後まで彼女は本作における希望の光だった。
一方で、その強烈な光の影を担っていたのが側用人の久通(貫地谷しほり)である。彼女は紀州徳川家の2代藩主・徳川光貞の三女だった吉宗を将軍にするため、多くの者たちを手にかけた。その事実を隠蔽するために、村瀬(石橋蓮司)をも「没日録」と共に葬ったのである。
彼女の罪は決して許されるものではない。だが、許してほしいなど久通は毛頭思っていないのだ。地獄に落ちようとも彼女は吉宗を将軍にする必要があった。きっと吉宗なら人々の希望の光になってくれると信じていたのだろう。実際に吉宗は後世にしっかりとバトンを繋いだ。
最後に登場した平賀源内(鈴木杏)、青沼(村雨辰剛)、黒木(玉置玲央)の3人が彼女の志を継いでいってくれるだろう。また、彼女が生きた時代のずっと先の未来を生きる我々にも国を守り繋いでいく使命は託されているのである。
「一炊の夢を見させていただきました。良き夢にございました(久通)」
私たちもこの3ヶ月間、一炊の夢を見せてもらった。この夢の続きが見られる日を恋い焦がれてやまない。
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(C)NHK