<大奥>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー

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右衛門佐(山本耕史)は、綱吉(仲里依紗)が松姫を失った悲しみを隠し、これまでにないほどの奔放なふるまいをしていたことを知る。それでもなお桂昌院(竜雷太)から世継ぎを生むことを求められ、父の願いを懸命に応えようとする綱吉。江戸市中では赤穂事件や生類憐みの令も手伝って評判が下落し、善政をしけず世継ぎも作れない自分はなぜ生きているのかと慟哭(どうこく)する彼女を、大奥総取締・右衛門佐は優しく抱きしめる。

第7話のレビュー


「みな上様に恋をしているのでござります」

右衛門佐(山本耕史)が綱吉(仲里依紗)と褥をともにする男たちに言わせていた台詞を、こうも上手く使うとは。

右衛門佐、信平(本多力)、伝兵衛(徳重聡)、そして吉保(倉科カナ)。綱吉は「大奥」史上最も多くの人から寵愛を受けた将軍と言っても過言ではない。しかし、皮肉なことに、本人はずっと欲得なしに自分を愛してくれるのは父・桂昌院(竜雷太)だけだと思い込んでいた。桂昌院こそ、誰より己が望みのために綱吉を利用した人物だというのに。

桂昌院が敬愛する有功(福士蒼汰)は家光(堀田真由)との間に子をもうけることができなかった。しかし、世継ぎを生み、徳川の世を存続させるという将軍の役目を果たそうとする家光のため、有功は苦渋の決断を下す。玉栄(奥智哉/のちの桂昌院)と家光の間にできた子ならば、自分の子のように可愛がれる。そう思った「代わりに上様との子をなしてくれ」という有功の切なる願いは、悲しくも呪いになってしまった。

有功もまさか、自分の願いが愛する家光の子を苦しめることになるとは思いも寄らなかっただろう。桂昌院は有功を散々苦しめた徳川の血を繋ぐ将軍の使命を愛すべき娘に強いた。徳川御三家の子女を養子として迎える選択肢もあったが、もはや誰も望んでいないのに桂昌院だけが有功の願いを曲解し、貫こうとしたのだ。彼もまた春日局(斉藤由貴)と同じく、時代に取り残された悲しい人である。

春日局は力技で有功や家光を支配したが、桂昌院は綱吉を精神的な支配下に置いた。将軍の役目は子を成すことであり、そのためには男たちを虜にする器量と愛嬌が必要であると刷り込んだ。その呪いから綱吉を解放してくれたのが、のちに吉宗となる紀州徳川家の二代目藩主・徳川光貞の三女・信(清水香帆)と右衛門佐である。

地味な着物を身にまとい、自分には櫛も簪も必要ないと言う信。だが、聡明で家臣思いの彼女が人に愛されるために必ずしも美しさは必要ではないと教えてくれた。その強さは綱吉にとって、間違いなく希望になったであろう。一方で、自分が持てなかった強さを突きつけられることとなった。

どんなに己を苦しめた存在であろうとも、父を裏切ることはできない綱吉。賢さだけではない、優しさも兼ね備えた彼女の泣くように笑う姿が切ない。自信たっぷりに見えて、その実誰よりも脆さを抱えている。だが、将軍としてその脆さを必死で隠そうとする強さ。そこから溢れ出る聡明さと色気に右衛門佐も、信平も、伝兵衛も、吉保もが惹かれたのではないだろうか。

欲得抜きに自分を愛してくれる人がいると気づかせてくれたのは右衛門佐だ。年を重ね、子を成すという役目から解放されてようやく二人は結ばれた。寝所の様子は映さない。その場所での時間は愛する二人だけのものだから。

その後まもなく右衛門佐は急死。綱吉が嫉妬に狂った吉保に殺されるというラストは悲しいものであった。しかし、吉保の「佐には会えましたか?」という語りかけだけは妙に心地いい。綱吉はようやく苦しみから解放され、あの世で右衛門佐に会えた。そう思えば、少しだけ救われるような気がする。

※この記事は「大奥」の各話を1つにまとめたものです。

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