<大奥>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー

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時は、8代・徳川吉宗(冨永愛)の時代へ。吉宗は久通(貫地谷しほり)から村瀬(石橋蓮司)の死を知らされる。それと同時に、吉宗が読んでいた『没日録』の続きが紛失。吉宗は村瀬の死と『没日録』の紛失に何か関係があるかもしれないと怪しむ。その一方で、吉宗は苦しむ民の為に「上米の制」や「目安箱」など様々(さまざま)な政策を打ち出し、いよいよ『赤面疱瘡』の解決へ動き出していくのであった。

第8話のレビュー

よしながふみの漫画「大奥」が全編ドラマ化されると聞いて、楽しみだなと思っていたエピソードがいくつかある。その一つが、7代将軍・家継の時代における江島生島事件だ。決して恵まれているとは言い難い容姿ゆえに不遇を強いられてきた江島と人気歌舞伎役者・生島の、ほんのひと時心通わせる瞬間とその後の悲劇に泣いた。江戸時代の「美女と野獣」とも言えるこのエピソードが私は好きで堪らない。

だから誰が江島や生島を演じるのか、密かにワクワクしていたのだが、なんと5代将軍綱吉(仲里依紗)の死去後からすっぽりと話が飛ばされ、8代将軍吉宗(冨永愛)の時代に帰ってきた。え、間部詮房と勝田左京の話とか結構濃い話あるよ?どうやって飛ばすの?と原作ファンは思うに違いない。実は今回の第8話から大幅に改変が加えられている。何が違ったか、解説していきたい。

※以下、ネタバレを含むので、原作未読の方はご注意ください



まず、原作では吉宗の前で突然ポックリ逝った村瀬(岡山天音→石橋蓮司)がおそらく老衰以外の理由で急死した。前回のラストで誰かが何者かに殺害されるシーンがちらりと映ったが、多分村瀬だろう。それに伴い、吉宗が読んでいた『没日録』における綱吉以降の記録が消える。そこに知られては困る内容が書いてあり、誰かが村瀬と『没日録』を同時に葬ったのでは?と怪しむ吉宗。急なサスペンス要素。

これも前回のラストシーンで一瞬映ったが、多分犯人は久通(貫地谷しほり)な気がする。紀州徳川家の二代目藩主・徳川光貞の三女であった吉宗がなぜ将軍の座に就くことができたのか。そこには久通の暗躍があり、それを知られては困ると手を下したのであろう。

のちに久通がこれまでの行いを吉宗に懺悔する場面があるので、その頃にでも紛失した『没日録』の続きが戻ってくるかもしれない。全編ドラマ化と最初に告知していたので、どこかで特別編として6代将軍家宣、7代将軍・家継の時代も放送されるような気がしている。それを楽しみに待とう。

さらに、原作第1巻で早々に退場した水野祐之進、改め町人・進吉(中島裕翔)を再び登場させた。進吉が薬種問屋・田嶋屋に嫁いだという設定を最大限活かし、吉宗が彼に赤面疱瘡に効く薬を探せと命じるオリジナルの展開に。最終的に彼は赤面疱瘡を一人も出していないという村に伝わる「猿の肝」に解決の糸口を見出す。

SNSでは平賀源内と青沼は出ないの?とプチパニックが起きていたが、しっかり公式ホームページのあらすじにも二人の名前が出ているので、多分「猿の肝」で赤面疱瘡は治せないという結論に持っていくのだろう。次のエピソードに繋げる布石だ。

また、原作ではそんなに目立っていなかった大岡越前守忠相(MEGUMI)の活躍を前面に押し出し、吉宗の幕府財政再建に向けた改革をより丁寧に描いた。幕府の収入である米を大名から石高1万石につき、100石を取り立てる代わりに参勤交代の江戸在府期間を1年から半年に短縮した「上米の制」。そして、庶民の声を集めるために行った「目安箱の設置」だ。

そこに、小川笙船(片桐はいり)という江戸の町医者から貧しい者たちは医療を受けることすらできないという意見書が届く。吉宗は早速視察に行き、無料で診察を受けられる「小石川養生所」の設立に奔走するのだった。この笙船も、原作に名前こそ上がっていたものの、姿は映っていなかった。

こうした改変の理由には現代の政治に対する批判的側面も含まれているのだろう。国のため、民のために尽くす者たちの姿は、私腹を肥やした政治家へのアンチテーゼとなる。特に笙船の「人は国の宝だろうに。それとも貧乏人なんか人と思っちゃおられぬのかね」という台詞に批判精神を感じた。

一方で吉宗も完全無欠の将軍ではなく、無意識のうちに大奥の男たちを種馬扱いしていることを悪役的立ち位置にいる藤波(片岡愛之助)に言わせる。「ここにおる者達は皆、上様の種馬にございます。けれど、それをあからさまにしてはあまりにも虚し過ぎる。故にあたかも情の通ったものに彩ってきたのが、ここ大奥にございます」と。かなり真理をついた台詞だ。身体目的なことをあからさまに出す奴らに聞かせてやりたい。

それはさておき、藤波の言葉を受け、どこか自分は人として欠けているのではないかと落ち込む吉宗を「何一つ欠けることがない者など、果たしてこの
世におるのでございましょうか」「ご案じのところは微力ではございますが、私が補ってまいります」とフォローする杉下(風間俊介)、素敵すぎやしないか。

大幅な改変と聞くとなんだかマイナスなイメージがあるけれど、「大奥」の場合はメッセージ性も高まり、さらにキャラクターの魅力も倍増している。さて、私がもう一つ楽しみにしているのが家重と比宮様のエピソード。来週から三浦透子演じる家重が登場となるが、果たして比宮様は出てくるのか。どうか出てほしい。

※この記事は「大奥」の各話を1つにまとめたものです。

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(C)NHK

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