映画コラム

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2017年03月24日

『おおかみこどもの雨と雪』賛否両論の理由を考える:なぜ狼の姿でベッドインしたのか?【解説/ 考察】

『おおかみこどもの雨と雪』賛否両論の理由を考える:なぜ狼の姿でベッドインしたのか?【解説/ 考察】


7:冒頭とラストで提示される“おとぎ話”の意味とは?



この物語は、雪の「おとぎ話だって笑われるかもしれません」というナレーションから始まりました。

そして、「母は私たちの12年間は、おとぎ話のように一瞬だったと笑いました。満足げに、遥か遠くの峰をみるように」というナレーション、“雨の(ものと思しき)遠吠え”を聞いた花の心からの笑顔で終わりを迎えました。

物語と初めと終わりで、“おとぎ話”という言葉が一致しているのは、これが“寓話(たとえにより教訓を与える物語)”の側面が強い物語だからなのではないでしょうか。

この物語の主人公の花は、前述したように排他的な子育てをしていたが、その間違いを正していった。初めから何にも諦めない強い心持っていた。自分の思ったのとは違う道を生きる息子のことも肯定できた。
本作は“おとぎ話”でありますが、こうして考えてみると、実は普遍的な、我々の世界にある子育てにも当てはまることも描いています。
本作にある、そうした寓話的な“理想”や“価値観”に迎合できないと、どうしても批判的になってしまうのでしょう。

しかし、そのように否定したいという気持ちを持った場合であっても、その価値観は大切にしてほしいです。
なぜなら、細田守監督は前述したように、ある種の価値観を表現することが映画の命題だと思っている一方で、自分個人の問題意識をそのまま映画にするのではない、という信条で作品を作っているからです。

本作は、監督の理想の母親像を提示しているものの、問題意識や価値観を“押し付ける”ことは目的としていません。この映画で「それは違う」、「こうするべきだ」と観客それぞれが子育てや母親像の是非を考えられること、それも『おおかみこどもの雨と雪』という作品が持つ魅力であり、監督が掲げた映画の命題を果たしているとも取れるのですから。

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(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

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