「呪術廻戦」だけじゃない!設立10周年のアニメ制作会社「MAPPA」が世に放ってきたおすすめアニメ10選
4:日常を通して戦争をリアルに描く『この世界の片隅に』
MAPPA立ち上げのきっかけとなった『この世界の片隅に』は、2011年の設立から約5年の月日をかけ、2016年11月に世に送り出されました。
物語の舞台は太平洋戦時下の広島・呉。突然持ち込まれた縁談がとんとん拍子に進み、この地の北条家へ嫁ぐこととなった主人公すずの、“日々の暮らし”を描いています。
戦争へ「NO」を貫く作品はこれまでにもたくさんありました。ただ戦争を「当たり前を奪われることが日常だった人」の視点で描く作品は、非常に珍しいと思います。
また本作は2019年12月に『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』という、新たに約2500カット、40分間の映像を追加した別バージョンも作られました。
『この世界の片隅に』では、すずと嫁ぎ先の義理の姉・径子との関係性が主軸として描かれていましたが、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』では原作漫画で描かれていたすずと夫の周作、そして遊女のリンの三角関係がストーリーにしっかりと組み込まれました。この描写が加わっただけで、ぼんやりしているように見えていたすずが、実はやりきれない想いと折り合いをつけながら生きる大人であるということが鮮明に見えてくるのです。
日本は今のところ、戦争とは距離を置いているように見えます。ただこの作品を観たら、戦争という形ではないものの、自分たちの暮らしを守ってきたものが社会の流れの中で奪われていく共通点のようなものも見えた気がしました。
見えていないだけできっと、戦争は私たちの日常といつでも隣り合わせにある。だからこそ今ある幸せをどうすれば守っていけるのか――。
すずさんはやりきれない想いを抱えながら生きた日々を通して、私たちに優しく問いかけてくれるのです。
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