『映画 バクテン!!』元男子新体操アスリートが涙した“リアル”
男子新体操のゴールの描き方がすばらしい
――今回のお話ではもちろん、SNSでも「男子新体操をさまざまな角度から見てきたからこそ、全キャラクターに共感できた」とたてやまさんは呟かれていました。選手以外の視点からも何か共感できる部分があったのでしょうか?選手、マネージャー、指導の難しさ、男子新体操がマイナーだからこその悩みなどなど、全員に死ぬほど共感できてグサグサ刺さった+新体操やってる人にしか分からないコアな所がエモすぎて泣いてるっていうとんでもない心境だったのです…
— たてやま ふうや 男子新体操サクッと解説する人 (@TateFuuya) June 11, 2022
#バクテン https://t.co/mJztyfRV7T
たてやま:僕は現役時代、ケガをした関係で、団体メンバーのコーチ、マネージャー的役割を担ったことがあるんです。演技の細かな部分に対してアドバイスをする難しさを知る立場だったからこそ、大湊の指先がTVアニメから映画で変化したことに気づけたと思っています。
それから子ども視点でも楽しめましたね。映画には男子新体操に魅了された子どもたちも登場するのですが、その「カッコいい」と憧れる描写に競技経験者として共感しました。
また映画で印象的だったのが、「オリンピック競技ではない」というセリフです。映画は、今の男子新体操が抱える課題を丁寧に描いてくれていたと思っています。
――オリンピック競技ではないのはもちろん、知らない人も多いスポーツですよね。
たてやま:男子新体操をしていると言うと、器械体操か女子の新体操と間違われることがまだまだ多いんですよ。だからこそ僕は、男子新体操をSNSなどで広める活動を始めたんです。
また映画では志田監督が“より若い世代の男子新体操クラブチーム発足”のためにアオ高を離れる決断をしていましたよね。この行動は実際に、青森山田高校の元男子新体操部監督の荒川栄先生がしたことと通ずるんですよ。映画には男子新体操に魅了された子どもたちも登場するのですが、実際に今の男子新体操界にはこの子たちの受け皿がまだまだ足りていません。その状況を変えようと、BLUE TOKYO KIDSというクラブチームを作ったのが荒川先生をはじめとするOBの方々なんです(※2)。なので志田監督に荒川先生が重なりましたね。
※2…BLUE TOKYO KIDSの監督は川戸 元貴先生
一番左が志田…ではなく荒川監督(写真提供:たてやまふうや)
――男子新体操が抱える課題とその解決への一歩も、本当にリアルに描かれていたのですね。
たてやま:男子新体操は、映画で描かれたこと以外にもまだまだたくさんの課題を抱えたスポーツだと思っています。それでも男子新体操が抱える課題にも真摯に向き合ったうえで、こんなにもすばらしい形で男子新体操のゴールを伝えてくれたアニメスタッフの皆さんに、僕は心からありがとうと伝えたいですね。
――伝わってきたのは、どんなゴールでしたか?
たてやま:「大会で優勝することだけが、ゴールではない」ということです。「今いるチームでみんなで楽しく跳べたら、最高の演技だよね」というメッセージが、アオ高のメンバーの姿からヒシヒシと伝わってきました。
また「競技に打ち込んだ先」を自分で作っていく大切さも伝えてくれたと思っています。男子新体操も競技である以上、勝敗はつきます。だから勝ちにこだわる気持ちも大切です。ただ「優勝したから何?」となっているのが、男子新体操の課題の1つでもあります。
僕はTVアニメで、とても印象に残っているシーンがあります。それは、志田監督のバックに交差する飛行機雲が描かれたシーンです。
©バクテン製作委員会
僕はあのシーンが志田監督自身の過去と今、そして未来を示唆していたのではないかと思っています。志田監督はケガでプレーヤーとしての道を断たれましたが、指導者という形で男子新体操にかかわることを決めてアオ高のメンバーたちと一緒に跳びました。そしてこの出会いが映画で描かれる志田監督の新たな夢へと繋がっていくわけです。
『映画 バクテン!!』は、男子新体操に関わる人すべてに、TVアニメで描かれた飛行機雲の先をも見せてくれると思っています。
(写真提供:たてやまふうや)
「飛行機雲の先」が確かめられる作品
筆者も一足先に『映画 バクテン!!』を鑑賞したが、たてやまさんの元男子新体操選手視点で改めて観てみようと、今回のインタビューを通して決意した。
また本作に対してたてやまさんが感じた「テーマ」は、男子新体操を知らない人にも届くと思っている。いま、大好きなこと、夢中になっていることを大切にすることの尊さ、その未来を自分で切り開いていくことの大変な中にもある高揚感。
©バクテン製作委員会
『映画 バクテン!!』は、たてやまさんの言う「飛行機雲の先」が、一人ひとりに存在することを確かめられる作品だ。
(文:クリス菜緒)
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