<雪女と蟹を食う>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第11話ストーリー&レビュー
第11話のストーリー
>>>「雪女と蟹を食う」の画像をすべて見る彩女(入山法子)の死への決意を変えることができず葛藤する北(重岡大毅)。「明日、一緒に蟹を食べて、そして一緒に死ぬのよ」と言った彩女を思い出していると、彩女から特選蟹フルコースの予約が取れたと報告される。北は、彩女を救うため、自ら命を絶とうとしていた時のことを思い出すが、その中で自分は彩女によってとっくに救われていたことを実感し…。そして2人は、遂に“蟹を食べる日”を迎えてしまう。
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第11話のレビュー
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会蟹を食べることが決まり、北(重岡大毅)は死にたいと思っている人間をどうやって助ければいいのか悩んでいた。背後に映る「起点」と書かれた看板が、旅のはじまりに立ち返れと暗示しているみたいだった。
そして北は、これまで自分がいかに彩女(入山法子)本人と、彼女と過ごしてきた時間に救われていたかに気づき、泣きはじめる。赤すぎるほど真っ赤な太陽に見守られていることに、なんだか胸がざわざわした。
最初こそ緊張の面持ちだった北も、ついに念願だった蟹を食べ、みるみる表情がゆるんでいく。彩女も、とても楽しそうだ。誰も彩女が死を望んでいるとは思わないだろう。同時に、案外これくらいの距離で、死への渇望に接することがあるのかもしれないと感じて怖くなった。
ありとあらゆる方法で調理された蟹を食べつくした2人。北は不安気に表情を曇らせ、彩女は覚悟のさらに向こう側にいっているように見える。
誰にも迷惑をかけずに死ねそうな場所へ向かう。人も建物も何もない場所。それは、まだ若い2人が死ぬにはあまりに寂しい場所だった。
北は泣きながら、言葉を詰まらせながら、思いの丈をぶちまける。また旅をしよう、行っていないところはたくさんある、お金がなくなったら自分の内臓を売ってもいい……。
このときの北の頭の中には、死にたい人を助ける方法、という概念は消えてしまっていたのではないか。ただ、彩女と生き続けたい一心で、他にどうしようもなくてそうしている、まるで子どものように言葉を放る北に、そんなことを思った。
ずっと一緒にいようという言葉よりもずっとずっと重い内容だったが、彩女にとっては裏切りに等しい。彼女が北と一緒にいたのは、救うためでも救われるためでもなく、ただ死ぬためだったから。
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
彩女は、ついに北と旅を続けてきた理由を明かす。夫・一騎(勝村政信)の小説家としての素質を愛し、自らが彼の文字となることで日本一の作家にしたいと考えていた。北は“凡庸な私=彩女”のもとに舞い降りたチャンスだったのだ。
なぜ死ななければならないのかと問う北に、「あなたにはわからない」と答えた彩女。自らの命を賭し、夫の作品の文字になる。そのことは夫にとって未来永劫消せない呪縛にこそなれ、彩女への愛にはならないだろう。この不毛なすれ違いゆえに、誰の幸せも見えてこない。
しかし、彩女は一切を振り切るように、1人で海に入って行く。稚内の海は暗く濁り、荒れていた。気迫に押されて波打ち際で叫ぶことしかできない北に対し、気付けば肩まで浸かりそうな位置まで来ている彩女。「生まれ変わったらあなたのような人になりたい」と言い残し、波の間に消えていった。この場面でのこの言葉は、これ以上ない愛の言葉にも聞こえる。
だが、北が彩女の前で時に優しく、時に愛情深く、そしてたまに愉快であったのは、北自身が振り返っていたようにすべて彩女が北に優しくしたからだ。人は鏡。今の北は、彩女がいてこその北なのだ。
果たして、彩女はどうなってしまうのか。次週、ついに最終回。2人の旅路の行く末を見守りたい。
※この記事は「雪女と蟹を食う」の各話を1つにまとめたものです。
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