<雪女と蟹を食う>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
>>>「雪女と蟹を食う」の画像をすべて見る死ぬ前に蟹を食べるため北海道へ向かう北(重岡大毅)と同行する謎多きセレブ人妻・彩女(入山法子)は山形・銀山温泉を次の目的地に北上していた。そんな中、体調を崩した彩女を目の前にした北は、ふと自分の辛い過去を振り返る。銀山温泉に到着し、彩女の看病をする北だったが、彩女が婚約指輪を付けていることに気づき複雑な気持ちに。さらに翌日、道中で書店に寄った北は、偶然彩女の夫・一騎(勝村政信)の小説を見つけ…。
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第3話のレビュー
薬局の駐車場で倒れた彩女(入山法子)に駆け寄り、抱き締める北(重岡大毅)。その強さ、がむしゃらさは、まるでバラバラになってしまった大事なものを繋ぎ止めようとするみたいだった。今回、ついに北の過去が明らかになった。冤罪で捕まってしまった彼は、しかし親友にも、恋人にも、家族にすら信じてもらえなかった。そればかりか「生まれなければよかった」「顔も見たくない」といった暴言を浴びせられる。そんなものだろうか。
そして壊れたように笑う。見ていて不安になるような笑いだった。社会的に、そして、精神的に、彼はこの時、1度死んでいる。
さらに、その後も職場の同僚と思しき人たちから「変態野郎」とレッテルを貼られてからかわれる。反論をしようとするも、堪えきれずにトイレで嘔吐。
「俺が一体何をした」と当時の北は言うが、それが自業自得であったと思い至る。大事な人たちを、大事にできなかった。その報いなのだ、と。
それに気付いたからこそ、強く強く彩女を抱きしめたのかもしれない。もう2度と失う痛みを味わいたくないと叫んでいるようだった。
銀山温泉で迎えた夜、彩女は体調が悪いにもかかわらず、北にキスも、それ以上も求める。明らかに様子がおかしい。そして、北はそれが自暴自棄なのだと悟る。
北の目がまた暗く沈んだ。自分は愛を感じていたのに、その相手が自分を受け入れてくれていたのは愛ではく、自棄ゆえ。北の思いは届かないのだろうか。
翌日、早くも北海道へ渡ろうと言い出した彩女に対し、田沢湖や弘前城へ寄ることを提案する北。死にたがっていたはずの北の、生への執着がまたしても表出した。
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
しかし、すでに手持ちの現金が70万円を切ったということで、フェリー乗り場へ向かうことに。道中、北海道のガイドブックを買いに立ち寄った書店で、北は雪枝一騎という作家の小説を手に取る。彩女の夫は作家で、彩女の苗字もまた雪枝だ。
実話に基づいているというその小説の内容は壮絶だった。作家の若く美しい妻は、作家を執筆活動に専念させるために自分を犠牲にして生計を立てた。そのことに重さを感じた作家は不倫に走るも、妻はそれを咎めない。そして、妻を捨てる……。
これが事実なのであれば、彩女は夫のために働きながら、最終的には捨てられてしまったということになる。そこにどんな苦悩があったかはわからない。だが、少なくとも、彼女が自棄を起こしたきっかけを知ることができた。
銀山温泉での夜、婚約指輪をお守りと表現した彩女の姿が勝手にフラッシュバックしてきた。あれは、彼女がまだ夫に愛されていた記憶の象徴だ。“氷みたいな石”からしか、温かさを感じられない日々を送ってきたのだろう。これまでほとんど見えてこなかった彩女の内面を、少しだけ感じられた瞬間だった。
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
そして、北は彩女に「死ぬつもりで俺についてきた?」と問いかける。すると彩女は驚いたようにそれを肯定する。彼女があの日言った「いいですね」は、蟹を食べることだけに、ではなかった。
「この夏が終わったら、私がしれっと元の生活に戻ってしまうと思っていたのに、優しくしてくれていたのね」「でも大丈夫」「私もあなたと一緒だから」……彩女はそう言って、北を抱き締めた。
彩女の死への渇望は、北よりもずっとずっと強い。というより、北はすでに当初の目的を失っているのではないかとすら感じる。その証拠に、ここでは北は彩女のハグをただ立ち尽くして受け止めているだけだった。薬局の駐車場では彩女のことをあんなにも強く抱きしめていたにもかかわらず。
恐らくは長い間、静かに死を渇望してきた彩女と、彩女と過ごすことで生への希望を見出しはじめた北。念願の北海道へ足を踏み入れた2人は、この後どんな道を辿っていくのだろう。
※この記事は「雪女と蟹を食う」の各話を1つにまとめたものです。
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