<雪女と蟹を食う>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第9話ストーリー&レビュー
第9話のストーリー
>>>「雪女と蟹を食う」の画像をすべて見るマリア(久保田紗友)から彩女(入山法子)の居場所を聞き、一心不乱に彩女の元を目指す北(重岡大毅)。再会した二人は小樽まで車を走らせる。海鮮丼を食べ、街を散策し、旅を楽しむ二人だが、北は、離れていた時間のことを一切尋ねてこない彩女に『蝉時雨』に出てくる妻を重ねていた。一方、一騎(勝村政信)は巡(淵上泰史)から彩女が男と北海道にいると聞かされ…。彩女と一騎の歪な夫妻関係。その過去が遂に明らかに…!
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第9話のレビュー
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会マリア(久保田紗友)と別れた北(重岡大毅)は、教会で彩女(入山法子)と再会することができた。2人は小樽の街を楽しむなど、これまでの生活に戻ったかに見える。
ところが彩女は、北がいなくなっていた間のことを一切尋ねない。そのことに疑問を抱いた北は彩女を問い詰めるも、「感情に任せて怒る女性のほうが男の人から見れば可愛げがあるのかもしれませんね。でも私はもう泣きたくても涙が出なくなってしまったの」と表情のない顔で告げられる。
今回は、彩女がそんな風になってしまった過去が、一足先に稚内へ向かった彩女の夫・一騎(勝村政信)の目線で明かされた。
一騎に恋をした高校生の彩女は、教師を辞め小説家として生計を立てるという一騎についていくことに。しかし、数年後には生活がままならなくなり、ついに一騎は仕事を探すと彩女に言うのだった。
それを聞いた彩女は、お金のことは何とかすると言い残し一騎の元から姿を消した。1か月後、500万ほどのお金を作って戻ってくる。このお金をどうしたのか、と困惑する一騎を前に、彩女は微笑みながらその時の経験を綴った日記を託す。この日記こそ、一騎が書いたベストセラー小説「蝉時雨」の元となったものだった。
「おだまきの花のようだった少女が、冷たい雪女になり果ててしまった」と一騎は言ったけれど、一騎の前で彩女が笑う描写は、高校時代を含めてもお金と日記を渡す場面だけだったのではないか。
高校時代の彩女の言った「必ず先生の役に立ちます」という言葉も、大人になってからの「私があなたを日本一の作家にしてみせます」という言葉も、一貫して一騎を小説家にすることのみを指しているように聞こえる。お金は何とかすると言ったときだって、嬉々としているようにすら見えた。やっとこのときがきた、とでもいうように。
つまり、彩女が愛していたのは一騎の小説家としての才能……というより、小説家として生きる一騎、一騎を一流の小説家たらしめる自分だったとしたら。
だって彼女は、ベストセラー作家となった後もあまりうれしそうではなく、その原因を自分が凡庸であることのせいにしていたのだから。「蝉時雨」で一騎を太宰治にできなかった、その一点を悔いていたのだろう。
そして一騎は、今回納得のいくものが書けなかったら、小説家を辞める覚悟だという。そのことを彩女が知っていたのなら、「蝉時雨」を超える体験を自分に課し、それを一騎に託そうとしているはずだ。今回の彼女の一連の行動の意味が、少しだけ理解できそうな気がする。
そうはいってもやはり、彩女の愛は歪だ。もちろん何をどう愛するかは人によって様々だが、彩女の強く歪な愛に戸惑い、心が離れてしまっていたとしても、一騎を責めることは難しいと筆者は感じる。
また、気になったのは巡(淵上泰史)が一騎と通じていたこと。2人は「蝉時雨」になぞらえて彩女が一騎を殺しにくる、と考えているらしい。彩女と一騎の再会がどのように訪れるのか、気になるところだ。
再びはじまった北との旅で、また表情を取り戻したように見える彩女。ところが、同じ入道雲も、もう同じようには見えていない。青空に伸び伸びと広がり蝉の声も聞こえない静かな北の入道雲に対し、狭い暗いところから切り取られた蝉の声が鳴り響く入道雲を見ている彩女。彼女はどんどん自分の内にこもっているようだ。
愛するもののために身を尽くし、裏切られて涙も枯れ果ててしまった彩女の心に、雪解けのときは訪れるのだろうか。2人の旅は、いよいよ稚内に突入する。
※この記事は「雪女と蟹を食う」の各話を1つにまとめたものです。
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