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2022年07月27日

<雪女と蟹を食う>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<雪女と蟹を食う>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー


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人生に絶望した男・北(重岡大毅)は、死ぬ前に北海道で蟹を食べるため、強盗に入った家の人妻・彩女(入山法子)と車で不思議な旅を始める。日光の街並みを走り抜け、中禅寺湖へ。湖畔のホテルで一泊し、会津若松に辿り着く。この旅を「大人の夏休み」と言い、ご当地グルメや観光地を楽しむ彩女に対し、どこか振り切れない様子の北。そして、二人は次なる目的地に山形の銀山温泉を選ぶのだが…。

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第2話のレビュー

車の中で逡巡したのち、栃木名物・レモン牛乳を飲みながらの「蟹を食べて、そして、死ぬ」という北(重岡大毅)のナレーションがあまりに不釣り合いだった。1話の冒頭であんなにも近くまで迫ったはずの死の現実味が薄らいでいる。

彩女(入山法子)も彩女でガイドブックを買い、明日は会津若松へ行こう、と誘う。大人の夏休みをはじめるらしい。

中禅寺湖のほとりで1泊する2人。夜、北は彩女の誘いから逃げる。そして煙草を吸いながら、この旅路の果てに待っているものについて考える。にもかかわらず彼の脳裏によぎるのは、彩女と笑顔でTシャツを選ぶ場面だった。楽しそうで、はたから見たら普通のカップルだ。明日も明後日も、きっとその先も、こんな日々を続けていくはずの。

今回のタイトルは「死より残酷な死」。北にとって辛いことを手放すための選択肢だったはずなのに、彩女との旅で楽しさを感じてしまったからこそ、この後の死がより残酷なものになろうとしている。生への心残りを自覚した自死なのだから。

ならばいっそここで……北にとって忌々しい記憶を想起させる蝉の声が頭の中で響き、ベランダから身を乗り出しかける。しかしそれは彩女によって阻止された。「死なないでくださいね、蟹を食べるまでは。絶対に」と発した彩女は、一体北に何を求めているのか。

北は、煙草を吸う彩女の横顔を見、煙草にすら嫉妬する。彼女の本心は見えないが、北は図らずも彩女から生きる希望をもらっている。傷付いた過去を癒やしてくれる存在。そこに恋愛とは異なったとしても、なんらかの愛情が芽生えるのは至極当然な流れだ。

濃密な時間を過ごす2人。「今日は優しいですね」と言った彩女の声が、今までよりもよく聞こえる。ただの行為ではなくなっているのだろう。心情に変化が生じている北、それを行動の端々で感じはじめている彩女。心が通い合いつつある。

しかし、彼女は夢を見る。誰かが迎えに来る夢だ。うなされて起きたところから、悪夢だとわかる。横ではまた北が爆睡している。ここだけを見ると、明らかに彩女のほうが苦悩を抱えているように感じた。

Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会

翌日は、会津若松へ。お互いその次の日が誕生日だと知り、お祝いをしようとはしゃぐ彩女。揃いのお猪口を購入する。そんな彩女に隠れて、北も指輪を購入。今にもバレてしまいそうな不器用さで店員とやりとりをする北がかわいい。

その夜は馬刺しや鯉のうま煮に舌鼓を打つ。北は料理と日本酒を愉しむ彩女に「変わりましたね」と声を掛ける。それを受けて彩女は「享楽に耽ることでしか救われないことがある」と最近気づいたと言う。

この享楽ばかりの旅路で救われているのは北だけではなかったのだ。「蟹を食べたくて盗みを働くなんてすごい発想」「バカ」と彩女に言われる、このやりとりのなんと自然なことか。

その後の「快楽を素直に享受できる人間だけが、幸せを貪れる」という彩女の台詞がじんわりと染みた。死を決意し、北がやぶれかぶれになったからこそ辿り着けた享楽の中に、今2人はいるのだ。

しかし北は、先に寝てしまった彩女の頭を撫でる。そこにはこの瞬間の享楽に溺れるだけではない確かな感情が見え隠れする。「おやすみ」という優しい声に、それが豊かに含まれていた。

Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会

朝起きると、体調を崩してしまったらしい彩女。足元はおぼつかず、ホテルのロビーで倒れるも彼女はどうしても銀山温泉へ行きたいと言う。

北が購入した指輪はまだ渡せていないのに、彩女の指には光るものが。図書館で北が見た、あの高そうな指輪だ。そこで北はふと我に返る。帰る場所のない自分と、いずれは旦那の元へ帰るはずの彩女。彼女と時間を過ごせば過ごすほど、その先に待つ死の残酷さが色を濃くする。芽生えた愛情が嫉妬に変わる。また蝉の声に誘われ、北はアクセルを踏み込んだ。ここで一緒に死んでしまえば、彩女を旦那の元へ返さなくて済むから。

結局寸でのところで事故にはならなかったが、北の中で欲望が次第に膨れ上がっている。この旅路と北の愛情は、どこへ行き着くのだろう。


※この記事は「雪女と蟹を食う」の各話を1つにまとめたものです。

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Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会

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