<雪女と蟹を食う>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
>>>「雪女と蟹を食う」の画像をすべて見る」死ぬ前に蟹を食べるため北海道へ向かう、人生に絶望した男・北(重岡大毅)と謎多きセレブ人妻・彩女(入山法子)。彩女が死ぬためにこの旅についてきたと知った北は、彩女の冷たい表情に何も言えなくなってしまう。函館へと向かうフェリーへ乗り込んだ2人だったが、狭い客室で気持ちがすれ違い…。そんな中、彩女は北に「本当は死ぬのが怖くなったのではないか」と問う。北が出した答えとは…。
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第4話のレビュー
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会「私もあなたと一緒だから」と、北(重岡大毅)を抱き締めた彩女(入山法子)。あなたを1人で死なせはしないという抱擁だが、北はそれに応じることができなかった。彩女が死を望んでいることを受け入れられずにいる。
そして「死から逃れられるなら、浮気のひとつやふたつしてやればいい」と彩女に言う。このときの北には、このまま何事もなく日常に戻り、彩女が寂しいときには自分と会ってくれればいい、という下心があった。北は、それだけで生きられると思えたのだろう。
しかし、彩女は旦那に浮気をされて寂しいからというだけで死を決意したのではないらしい。彩女が望んでいたのは「本当の幸せ」。私というつまらない人間の物語を終わりにしたいのだと答える。彩女が描く彼女自身の物語。それは一体、どんな物語なのか気になるところだ。
彩女は北に、死ぬのが怖くなったのではないかと問いかける。そして、残りのお金を半分あげるから、北海道に着いたら飛行機で帰ればいいと提案した。「やり残したことがあると感じるうちは、死なないほうがいい」。
彩女の揺るぎない死への覚悟を前に、一瞬戸惑いを見せる北。それは彼女の手を骨だけに錯覚させるほどに強烈な戸惑いだ。しばし思案した後、北は1人になるくらいなら彩女と一緒にいるほうを選んだ。冤罪をきっかけに周囲から孤立してしまった経験が、北にこの選択をさせたのだろう。
「だから約束して。絶対1人で死なないで」と彩女に言う北の表情は強く、なのにどこか不安気だ。人生への諦めと、子どものようなあどけなさが混在しているようだった。
北と出会い、死ぬきっかけを得た彩女。今や自身と彩女を独りぽっちにさせたくない一心で死を受け入れている北。2人は自分たちの欲望を実感することで、生を感じ取る。一時は愛のある行為へ変化したかに見えたものの、また切ない痛みが襲う。2人で幸せになれるなら、それが1番いいはずなのに、そんなのは夢物語だと打ち消されていくようだった。
それでも彩女は「こんなに他人と深く繋がれたと思うのは、人生で初めてかもしれない」「好きよ」と言う。しかし北は、その想いから逃げるように、部屋を出て行ってしまった。愛情がすれ違う。
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
そして、彩女は自身の過去に思いを馳せる。それは学生時代の記憶だった。教師との目と目で交わすやりとり。旅の途中も何度かペンを走らせる描写があったが、10代の彩女も何かを書いているようだった。
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お弁当を買って戻ってきた北。先ほどの微妙な空気はすでにどこかへ行っていた。そのことで気が緩んだのか、北は思わず彩女の手料理が食べたいと口走る。そんな場面、訪れるわけもないのに。「時々忘れてしまう。俺たちは壊れた歯車同士で、これは決して戻ることのない旅ってことを」という北の心の声。いつもより少しだけ乾いて聞こえるその響きが、より切なさを増長させていた。
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
食事の後、なぜお互いを選んだのかと尋ね合う2人。彩女は北を選んだ理由として、「あなたは私と同じだから」と話す。寂しさを浮き彫りにする夏、そこに“似たもの同士”の北が現れたから。夏の孤独を、セミの幼虫に例える。地上に出られるたった数日のために、何年もの間を過ごす。土の中だから、他者との関わり合いもない。たしかに、深い孤独の象徴かもしれない。
彩女は夫・雪枝一騎の小説「蝉時雨」を、「これは失敗作よ、色んな意味で」と断じた。実話かどうかは明言せぬまま。果たして、この言葉の真意とは。
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
一騎(勝村政信)と電話をする彩女。回想シーンに登場したあの教師は、彩女の未来の夫だった。ヘミングウェイなどの単語が聞こえる。小説家の妻だからなのか、彼女も文学にはかなり精通しているようだ。一騎の傍らには、女性の姿。無言のまま腕を絡める様子に、2人の関係性が浮き彫りになる。しかも2人は北海道にいるようだ。
北が読み進めていた「蝉時雨」では、最終的に妻が夫を包丁で刺す描写があった。3話で北が訪れた書店のポスターには「実話をもとにした」とのコピーが添えられていた。実際に一騎は彩女ではない女性といることから、不倫をしたことは間違いないだろう。しかし、それ以外は一体どこまでが事実なのか。
結局、彩女の心の内も、死にたい理由も、よくわからないままだ。気になるのは、彩女が一騎の小説を「失敗作」と表現したこと。あんなに書店でスペースを取って陳列していたのだから、売れていない、という意味ではないだろう。彩女が言っていた「本当の幸せ」と何か関係があるのだろうか。
フェリーは順調に進み、ついに北海道へ到着してしまった。早くも最後の地に進んだこの旅路を静かに見守りたい。2人の幸せを、ひそかに祈りながら。
※この記事は「雪女と蟹を食う」の各話を1つにまとめたものです。
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