「silent」1話〜最終話まで名言&名場面を総復習!
最終話「変わったもの、それでも変わらないもの」
10話ラストは涙で終わったが、最終話はあたたかな感動に包まれた。紬と想はもちろん、登場人物それぞれがそれぞれの大事な人へ、言葉の花束を贈るような素敵なラストだった。■ハッとした、湊斗の言葉
光に言われ(ハメられ)、自分の部屋に置きっぱなしだったパンダグッズたちを紬に渡しにきた湊斗。「想の見てる青羽ってさ、高校生の紬ちゃんで止まってるんだよね」「見てる時間が8年分ずれてる」
この指摘にはハッとさせられる。一瞬、もしやここで湊斗とよりを戻すとか……?と思ったけれど、玄関から先には入ってこずに、2人のことだけ考えて話すところがすごく湊斗らしい。
湊斗くん、絶対幸せになってね!!!高校時代の友人、野本(井上祐貴)のセリフだが、おそらく全視聴者の総意だ。
■背中を押した、奈々の言葉
想にかけた奈々の言葉も響いた。「彼(正輝)と私がうまくいかなかったのは、聴者とろう者だからじゃないよ、私が勝手にそう思いたかっただけ」
「私たちはうつむいてたら、優しく声かけてもらっても気付けない。見ようとしないとダメだよ」
「うつむいてたら」は、多分物理的だけでなく心理的な意味も含まれているだろう。かつて自分もうつむいていた奈々だからこそ言える言葉だ。
2人への恋を諦めた湊斗と奈々が2人でいることを後押しする流れはなかなかない展開であり、心にくるものがある。
■想と紬の黒板のシーン・体育館のシーン
2人でそれぞれ思ったことを書、「好きになれてよかった」と書きながら涙を流して想を見つめ、「元気でね」と書いて去っていこうとした紬。筆談が手話になり、ついに想は、「それでも今は、一緒にいたい」と伝えた。「人それぞれ違う考え方があって、違う生き方をしてきたんだから、分かり合えない事は絶対にある。それでも一緒にいたいと思う人と、一緒にいる為に、言葉があるんだと思う」という紬の言葉は、すべての人に当てはまる。
そしてその後に行った「紬の行きたいところ」は、体育館だった。紬が想を好きになった、彼が「言葉」についての作文を読んだとき、実は想も自分のほうを見ている紬に気づいていたことが判明。紬に頼まれてその作文を手話で伝える想、紬も手話で拍手する。
手をつないで歩く2人も、想が昔紬に貸したiPodの曲を、紬に聴かせるのもよかった。
告白したときに聴いた「魔法のコトバ」、そして「スカーレット」。
「離さない このまま 時が流れても ひとつだけ 小さな赤い灯を守り続けていくよ」という歌詞は、あらためて紬と一緒にいたいと伝えた想の今の気持ちを表しているようで、じーんとした。
■花束の「おすそ分け」かすみ草の花言葉
湊斗が待っていたバスから、大きな花束を抱えて降りてきた奈々。もうこの光景がかわいい。笑顔で差し出しながら(花束を)あげるんだ、とジェスチャーで説明する奈々がとんでもなくかわいい。
奈々がお花屋さんに聞いた「お花は音がなくて、言葉があって、気持ちを乗せられる」という言葉がとってもよくて、誰かにお花をあげたくなる。これからお花を見るたび思い出しそうだ。
1本「おすそ分け」をくれるという奈々に、湊斗ははじめは遠慮するけれど、笑顔で勧められて受け取る。選んだかすみ草を、紬に渡した。ほかのお花もあったのにかすみ草を選ぶところ、人にあげようと思うところ「俺の分はいいよ」「そういう人だよね」という会話が湊斗という人を表している。湊斗くん、絶対幸せになってね(2回目)。
待ち合わせした想も、奈々からかすみ草をもらっていて、2人はかすみ草を交換する。
かすみ草の花言葉は「感謝」「幸福」「無邪気」「親切」、そしてお別れに使われる花でもある。これまでの話を考えて、くぅ~となった。
この「かすみ草のおすそ分け」や、「(背中や腕を)さする」など、言葉じゃなくても気持ちを乗せられることが出てくるのが、この物語の最終回だからこその演出だと思った。
花束をもらった正輝が、ものすごくうれしそうな優しそうな顔だったのもよかった。
■登場人物それぞれの「気持ち」が見えた
これまで出てきた人、ほとんどが出てきて、それぞれ大切な誰かへの言葉(気持ち)を表していた。紬の母・和泉(森口瑤子)が、想とこれで最後になるかもしれないという紬にかけた「お別れするときこそ、全部相手に渡さないとだめ。中途半端にすると、自分の中に残っちゃうから」という言葉、「(お父さんが)死んじゃう前に全部投げつけたの?」と聞く紬に「ううん、とってある。すっごい美化されてるから、思い出すたび楽しい」と笑うお母さん、強い……。
大変だったであろうお母さんが明るくて楽しそうなのは、こんな風に考えていたからなのか。「それもいいね」という紬もいい。
「私に何かできることある?」「背中さする練習しとくわ」と言う真子、紬と話して「楽しいことよりも傷つかないことを優先してほしいと思っていたけど、楽しそうなのがやっぱりいちばんほっとする」と言った想の母・律子、想よりも先に手話を覚えたという妹の萌、紬には内緒で手話を勉強しようとする光……。みんなみんな、幸せになってほしい。
「青羽の声、思い出せないしもう聴けない。でも、青羽の声が見えるようになってよかった」という想の言葉に、この物語もここまで観てきた自分も報われた気持ちになった。
最後、内緒話みたいにこっそり紬に話しかける想。なんて言ってるかわからないけど、高校のときにも同じやり取りがあり、紬にしかわからない「魔法のコトバ」だからこれでいいんだ。
想は紬とまた話せたし、手もつなげたし、ビデオ通話で電話もできた。奈々は、正輝にお花のお返しにあのハンドバッグがほしいと言った。できないことはあるけど、できないと思ったけどできることもあるかもしれない。
ありがとう、「silent」
私たちを3か月夢中にさせてくれた「silent」。振り返ると一人ひとりの登場人物が、みんなそれぞれ愛おしいし、幸せなラストでよかった。物語はここでいったん終わりを迎えたけれど、「silent」の言葉や気持ちをずっと思い出すのだろうなと思う。やさしい花束のような、宝物のような作品に、感謝の気持ちでいっぱいだ。(文:ぐみ)
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「silent」作品情報
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「silent」
キャスト
川口春奈 目黒 蓮(Snow Man) 鈴鹿央士 桜田ひより 板垣李光人
夏帆 風間俊介 篠原涼子
他
脚本:生方美久
音楽:得田真裕
主題歌:Official髭男dism 「Subtitle」(ポニーキャニオン)
プロデュース:村瀬 健
演出:風間太樹/髙野 舞/品田俊介
制作著作:フジテレビ
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