<ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第2話ストーリー&レビュー
第2話のストーリー
▶︎「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」画像をすべて見る自分たちが電車ごと30年後の未来へ飛ばされてしまったと知った直哉(山田裕貴)たちは、極限状態を皆で乗り切るため、紗枝(上白石萌歌)の提案で各々の持ち物を出し合い、平等に再分配することに。しかし優斗(赤楚衛二)が食料と水を集め始めた矢先、大量の飲み物が入ったカートを誰かが持ち去った痕跡が見つかる。犯人は誰なのかと疑心暗鬼に陥る佳代子(松雪泰子)、残り少ないモバイルバッテリーの電池を取り合い衝突する玲奈(古川琴音)と米澤(藤原丈一郎)、樹海の中から水源を見つけようと動き出す直哉と優斗、そして植物から水を作り出そうとする加藤(井之脇海)……。各々が生きるために必死でもがく中、ある人物が思わぬ暴走を始める。
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第2話のレビュー
水も食料もない、周りにはよく知らない人間ばかりで、ほかに行くところもない……。まさに極限状態のなか、萱島(山田裕貴)をはじめとする“30年後の未来に飛ばされた乗客たち”は、ギリギリで立っている。こんな状況下においても、消防士である白浜(赤楚衛二)には正義感があり、どんな相手にも誠実に接する。田中(杉本哲太)が大量の水を盗んだことがわかっても、これまでと変わらずここにいるべきだと主張した。おまけに、畑野(上白石萌歌)と空を見上げながら、“満月が綺麗だ”と会話する余裕さえある。
ドラマだから違和感なく成立する人物設定だろうが、現実にはありえない、と思ってしまう。約2日間まともに飲食できていない人間が、空を見上げる心持ちになれるだろうか。田中のように、狂ったように歌いながら自分の歯を抜いたり、寺崎(松雪泰子)のように、家族のことを思って一目はばからず泣いたりしているほうが、まともな人間のように見えてくる。
そして、萱島のように、田中を追放するためわざと多数決の流れをつくったり、水を見つけた場所を隠そうとしたり、むやみに嘘をつき続けたりするのも自然に思えてくるから不思議だ。
萱島は、父親が違って12歳も離れた弟・達哉(池田優斗)を育てるため、生きるのに必死の生活を送ってきた。まだ本編で詳しく描かれてはいないが、人に騙された経験も多くしてきたはず。騙される前に騙す、それが萱島にとっての処世術だとしたら、言ってしまえば彼は“疑う者”。そして、白浜が“信じる者”だ。
信じる者と疑う者。この極限状態で、生き残るのはどっちだろう。
彼らが30年後の未来に飛ばされてしまったのは事実。水源を求めて崖を登った白浜が、その頂上から見た景色は、見渡す限り人も建物もない受け入れがたいものだった。救助が来るような気配もなく、水や食料も限られ、スマートフォンの充電は尽きていく。
彼らの心中には、言葉にならない思いがふつふつとわきあがる。その衝動が、届くとは限らないメッセージを残させる。親へ、子へ、友人へ、仕事仲間へ。
普通だったら、あの日あの時間に電車にさえ乗らなければ、いつも通りに会えていた大切な人たちに対し、万が一のための言葉を残す。その様子は、現実に生きる私たちをも立ち返らせるほど、切なく危機迫って見えた。いま言わなければ、二度と言えないかもしれない言葉。ありがとう、ごめん、元気でね。そんな他愛のない一言ずつが、静かな電車内に響く。
「なんで? もう起こってたことだよ」
「みーんな、見ないフリしてただけ」
文脈は違えど、萱島が言ったセリフが妙な後味を残す。もうすでに起こっていることなのに、見ないフリをしてなかったことにする。そういったことが、人生には多すぎる。
大切な人へ大切なことを伝える営み。確実に変化している地球環境。“現状維持”が決して良い意味を持つわけではない、この国の政治。
私たちはこのドラマを、サバイバルSFドラマとして見ている。けれど、極限状態のなか、生きるか死ぬかのやりとりをしている登場人物たちの人生は、詳らかにされるたびに突きつけてくる。このままでいいのか、見ないフリをしているんじゃないのか。
最後には、信じる者ではなく疑う者が生き残る。甘い汁を吸う。そんな世の中でいいのか、と。
そう簡単に答えが出そうにはない問いを、このドラマは投げかけ続けている。
※この記事は「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」の各話を1つにまとめたものです。
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