<ブギウギ ・恋愛編>11週~15週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第52回のレビュー
スズ子(趣里)の前に突然、現れた青年・村山愛助(水上恒司)。スズ子の大ファンだと言います。
梅丸楽劇団での「ラッパと娘」を見て、心打たれたことを滔々と語ります。
真面目に褒めながら、「こんなおもろい生き物」と言ってしまうところもご愛嬌。
不器用だけど、好青年ふう。宿代の半分も出して去っていった愛助は何者。
偶然、帰りの汽車でも乗り合わせます。
でも小夜(富田望生)は泥棒呼ばわり。追いかけて来たに違いない、「この世に偶然はねえ」と疑います。
混んでる汽車のなかで、泥棒、泥棒と、証拠もないのに大騒ぎするのは、感心しません。
同席の少女チセが愛助をかばいます。お芋もくれたと。
スズ子は、貧乏な学生さんと思い込んでいますが、宿代は半分払い、芋を譲り、と気前がいいというか、羽振りがいいというか。
その愛助を、たまたま居合わせた軍人が「坊っちゃん」と呼び、うやうやしく接します。
なんと、愛助は有名な村山興業の御曹司でした。
お金持ちだから宿代の半分くらい払えてしまう。でも、けっしてえらぶらず、むしろ謙虚。おとなしいのは、食事の席で「僕は戦地は……」と言っていたので、カラダが弱くて戦地に行けないのかもしれません。そこが六郎(黒崎煌代)とは違います。しかし、スズ子は、六郎を亡くしたのに、戦地に行くでしょ、と世間話のように切り出すのが意外な気もしますが。
村山興業の御曹司と聞いた途端、五木(村上新悟)が態度を急に軟化させます。まったく調子のいい人です。
汽車で偶然、隣り合わせる、知り合いの軍人が現れる……と、これは、朝ドラ名物「ご都合主義」
であります。それはともかくとして、村山興業は、吉本興業をモデルにしているとは明言してはいませんが、暗黙でそういう感じです。
つまり、「わろてんか」のヒロインてん(葵わかな)が切り盛りしていた北村笑店とほぼ同じです。「わろてんか」では、てんの息子は準也で成田凌さんが演じていました。
愛助の正体がわかったところで、小夜が失くしたお金を見つけます。足袋のなかに入っていたなんて、お風呂にも入らず、寝る時も脱がなかったのでしょうか。不自然過ぎる。これは、愛助登場に合わせた吉本新喜劇的なドタバタのノリ?(偏見?)と思いましたが、考えてみれば、ないないと大騒ぎしたすえ、意外なところにあったという経験は誰しもあるものです。
小夜のドタバタなふるまいを、スズ子の歌う「ふるさと」が一気に浄化します。
少女のリクエストで歌うスズ子を、汽車の乗客たちは、しんみり聞き惚れます。一井(陰山泰)のトランペットの伴奏がさらにムードを高めました。
汽車の走行がずいぶんと静かで、まるで汽車が停まってしまったのかと思うような雰囲気でしたが、スズ子の歌で、世界が一瞬、止まったようなイメージかもしれません。
汽車に乗り合わせた人たちは、それぞれの目的地に向かっています。少女が、故郷を離れ岡山に行くのがちょっと寂しく思っているように、楽団の人たちは東京で公演できないから地方を転々と回っていて。汽車に乗る人は皆、目的に向かう希望や不安を抱えています。スズ子の「ふるさと」はそんな心に染みて、汽車のなかはひととき、永遠になったのです。
放送後の「あさイチ」では水上恒司さんがゲスト出演。大阪弁の難しさを語っていました。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
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(C)NHK