<おむすび>第10週~11週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第49回のレビュー

同じ商店街の住人なのに、美佐江(キムラ緑子)渡辺(緒形直人)を極端に嫌っています。結(橋本環奈)は仲良くなってほしいと願うのですが……。
商店街の人たちはもう長いこと諦めて放っているのでしょうが、戻ってきた結だから、この膠着した問題にうっかり口が出せるのでしょう。

美佐江が渡辺を毛嫌いするのは、阪神・淡路大震災で兄夫婦を亡くしながら、それでも前を向いて生きていこうとしている自分と比べて、いつまでも立ち止まっている渡辺が不甲斐ないと感じるようです。
聞けば、震災当時も美佐江は周囲に心配かけまいと、兄夫婦の死を黙っていたとか。がんばり屋さんなんですね。でもそのがんばりを他人にまで求めるのはちょっと違う。体力の違う人に、なんで山に登れないんだと言えないのと同じです。

だからこそ、その人にだからできることに気づいて、提案する。それが聖人(北村有起哉)の渡辺への靴修理の依頼です。さらに、歩(仲里依紗)の靴のカスタム依頼。
渡辺は相変わらず、酒に溺れ、ぐだぐだしていたら、亡くなった真紀が出てきて思わず手を握ると、そこにいたのは歩でした。弱いところを見られてきまずそう。

渡辺がアーケードに賛成したのは、真紀が賛成していたから、彼女の思いを叶えようとしたことがわかりました。真紀は亡き母(渡辺にとっては妻)も賛成しただろうと思っての賛成でした。
複雑な思いが絡み合って、なかなか解決しません。

結は結で、当時、冷たいおむすび「チンして」とわがままを悪気なく言ってしまったことを思い出して、後悔しており、防災訓練の炊き出しでは、ほかほかおむすびを出すことにこだわります。
あのとき、おばちゃんも「ほかほかを食べてもらいたかったと思う」と結は想像します。そう言われると、何度も出てきた回想がちょっと違って見えませんか。
どういうことかというと、最初は、おばちゃんが震災がつらくて泣いてしまったように思えたのが、結の解釈を聞くと、おばちゃんには料理をする人のプライドがあったと想像できるのです。
せっかく作ったのだから美味しいものを食べてほしい。レストランなどで、あたたかいうちに食べてほしいと思われるのと同じでしょう。
聖人の「職人として」と渡辺に言う言葉も同じ。
被害にあった人の可哀想さにフォーカスするのではなく、その人の誇りが災害で損なわれたことに着目する。でもその誇りは決して損なわれるべきではないし、それは取り戻すことができるのです。

ということで、今回は、懸命に前向きに生きている美佐江さんを演じたキムラ緑子さんのコメントをお届けします。
「すごく愛があるんだと思います。愛が無いと他人に対して怒らないじゃないですか」と美佐江を解釈しています。


愛が無いと他人に対して怒らないじゃないですか
キムラ緑子

Q1 出演が決まったときの気持ちは?

関西出身ですし、大阪でお仕事をさせてもらうことも多いので、朝ドラの撮影を大阪でできることは、ほっとしますね。BK(NHK 大阪放送局)はアットホームな雰囲気なので、関西弁でお芝居ができることをうれしく思っています。

Q2 演じる役・佐久間美佐江について

さくら通り商店街でパン屋を営む美佐江は、明るくて元気で人を幸せにしようとする女性です。30 年前の阪神・淡路大震災で被災していますが、震災という壮絶な体験をもつ人は本当に強くて優しいのです。一方で、被災した体験を演じることの難しさを感じています。実際に被災したことがないので、それは絶対に無理なんです。でも無理だと思い続けても、それでも起こったことを何とか想像して演じることが大事だと思っています。

食べ物がない、水がない、何日も着替えもできないという避難所の設定であっても、実際の避難所の撮影では、その日に現場に入ってその時だけの撮影です。もうずっとここで寝泊まりして撮影できたらいいのにと、もどかしさを感じていました。

Q3 商店街のメンバーについて

神戸の商店街の面々は全員が知り合いで、一緒に商売して助け合って一体感があります。ヘアサロンヨネダにしょっちゅう集まって居心地が良い家族のようなんです。テーラー店の高橋役を演じる内場勝則さんはお笑いのプロなので、こちらがどんな演技をしても、きっちり受け止めて返してくれるので安心感があります。ほかの商店街の面々も和む人ばかりなので雰囲気の良さが画面を通して伝わるといいですね。

緒形さんが演じている渡辺孝雄とも、きっと仲が良かった時代があったんだと思います。震災で娘さんを亡くした辛さから抜けられずにいる孝雄を、なんとかそこから抜け出させてあげたくて美佐江はジリジリしている。そのジリジリが怒りになっているんです。憎しみではないんですよね、すごく愛があるんだと思います。愛が無いと他人に対して怒らないじゃないですか。関わりが深い人だからなんとかしてあげたいし、だからこそ「バカヤロー!」とも思ってしまう。関係性が濃いんですよね。その人の関わりの深さも商店街ならではだと思います。

Q4 視聴者へのメッセージと見どころ

震災の問題が奥底にあって震災の PTSD も描かれますが、物語としてはずっと明るいです。神戸の商店街の面々のにぎやかさもそうですし。ギャルの子たちも個性的でかっこいいですよ。そこも楽しみにご覧になっていただきたいです。

※この記事は「おむすび」の各話を1つにまとめたものです。

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