<おむすび>第10週~11週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第50回のレビュー
防災訓練の準備が進むなか、糸島からアスパラガスが届きます。アスパラガスが育つには時間がかかるそうで、今年はうまくいったようです。タイトルバックの最後にもアスパラガスが出てきますので、重要なアイテムであることがわかります。タイトルバックに出ているアイテムが物語に関わってくることは以前から話題になっていました。
結(橋本環奈)は聖人(北村有起哉)と共に防災訓練の打ち合わせに参加、当日の手が足りないので誰かいないかという話しで渡辺(緒形直人)の名前があがります。が、美佐江(キムラ緑子)があからさまに嫌悪感を示します。
哀しいのは彼だけではないのに、ひとりだけいつまでもグズグズと前を向かないことを真っ向否定するのですが、聖人がかばいます。平行線なところ、ここでアスパラガスです。
うまく育つのに時間がかかるアスパラガス。野菜はそれぞれ個性があって育つ時間が違うと結が言い、商店街の大人たちは納得しました。
ここは、 年齢の低い、お子様にもわかりやすい表現ですね。
そしていよいよ子ども防災訓練の当日です。
わかめおむすびツナ缶とサバ缶のけんちん汁を結たちは振る舞います。
役所の職員である若林(新納慎也)は95年1月17日にあった阪神・淡路大震災のことを紙芝居仕立てで子どもたちに語り聞かせます。当時を知る大人たちもしんみり聞いています。
防災訓練がいい感じに進行しているなか、渡辺がやってきます。なんだかんだ言いながら美佐江が声をかけたのです。アスパラの話しが効いたのかも。
結が手渡したおむすびを渡辺が食べます。
この週の演出を担当した小野見知さんに取材したとき、「生きていくということを、おむすびと共に、彼自身が飲み込む瞬間の演技には鳥肌が立ちました」とおっしゃっていて、この場面が単に、渡辺がようやく気持ちを変えたということではないのだと感じました。
彼はまだ、生きる気力を取り戻してはいないけれど、生きていかないといけないのだと、苦い薬を飲むように食べ物を口にしたのでしょう。
これでまず、美佐江の渡辺への無理解とか反発とかが解消されました。それは結の力。
歩(仲里依紗)は、結は人と人を「結ぶ」と言います。
結のその役割は、栄養学校でもすでに発揮されていました。ぎすぎすする沙智(山本舞香)と佳純(平祐奈)を結びつけていました。
歩の話しを聞いていた愛子(麻生久美子)が、歩は「わが道を歩む」だと笑います。
名前は人柄を表す。愛子は愛の人で、聖人は学識が高く人徳のある人、ということでしょう。愛と聖って
かなり最強ではないでしょうか。
これらの漢字のネーミングがヤンキーが好みそうなイメージ(偏見)。
こうして防災訓練がうまくいったわけですが、気になったのが季節。夏の防災訓練に、ほかほかのおむすびっていうのがよくわからずで。
震災は真冬で寒かったから、あたたかいものが恋しかったと思うのですが……。
できたてのあたたかいものを食べる喜びと、放置されて冷え切ったものを食べる残念さは、似て非なるもののような気がします。
震災当時は深夜で冷え切ったおむすびは、単なる冷えたごはんとは違う、極端に冷え切っていたと想像できます。でも、ご飯って冷やご飯でも美味しいもの(おにぎりがそう)と、冷えるとたちまち不味くなるものがあって。冷えても美味しいように上手に炊くことが重要な気がしますので、その共通認識をまず前提にしないと、いろいろな意見がまとまらなくなる気がします。
今週は「人それぞれでよか」がテーマですが、それぞれを結びつけるための共通言語や認識、目的みたいなものが必要なのではないでしょうか。
今回の場合、震災のときーー寒いか暑いかどういう状況か、でどんな料理が最適かという目的が提示されてほしかった。アスリートの献立と同じですよね。アスリートの体型とどうなりたいかの目標によって計算が変わってくる。
渡辺さんの場合はどうなのか。渡辺さんはどうしたいのか。立ち直りたいのか、立ち直りたくないのか。周囲は、彼にただ生きていてほしいのか。商店街の人間関係を円滑にしたいからはみ出すことをやめてほしいだけなのか。
迂闊に手を出すには難しい題材だと思います。
※この記事は「おむすび」の各話を1つにまとめたものです。
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