<おむすび>第10週~11週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第51回のレビュー

子ども防災訓練での炊き出しが成功し、ヘアサロンヨネダでささやかな打ち上げをしていると、佐々木佑馬(一ノ瀬ワタル)が飛び込んできました。
第11週「就職って何なん?」(演出:大野陽平)は新たなターンへ。
佑馬は、歩(仲里依紗)をロサンゼルスにすぐに一緒に行ってほしいと言います。彼女じゃないとビジネスが成り立たないらしい。
明日すぐ発とうと準備をはじめる歩に結(橋本環奈)渡辺(緒形直人)の靴のカスタムを頼んだのはどうするのかと問います。が、歩はすっかりその件に関しては諦め気味で。
心配した結は夜分に渡辺を訪ねます。夜分って何時なんだ? そしてなんでほとんど仕事してないのに渡辺は店舗にいるんだ?
結は真紀が「うちのお父ちゃんは日本一の靴職人」と言っていたと伝えます。
歩が靴の修理を頼んだのは、真紀の自慢だったお父さんに戻ってほしいという気持ちだったのです。何かに集中していればつらいことが忘れられる、みたいなことを言ってましたが、いきなり職人の話しを出すと、展開がうまくいかないからでしょう。
第45回と49回で聖人役の北村有起哉さんが「職人として」というセリフを足したそうなのですが、北村さんは真紀のエピソードをあらかじめ知っていて、「職人」を足したのかもしれません。聖人はたぶん、真紀の言ったことを聞いていないと思いますが、真紀も聖人も、みんな渡辺の職人としての腕前に一目置いていたということが、あらかじめ布石として置かれていれば、唐突感もないです。北村有起哉さんのアシストがすばらしい。今回の「ルー大柴か」は台本にあったものだと思いたい。

結の話しを聞いた渡辺はついに心を動かし、出かける前に墓参りに来ていた歩に、試しにカスタムした靴を見せます。畑違いのギャル靴ですがみごとに作った渡辺に歩は感嘆の声をあげました。
そして、渡辺も「ギャル」だと讃えます。
歩は心を軽くしてロスに向かうことができました。めでたし、めでたし。
昔ながらの靴職人が、靴をデコることに最初は抵抗があって、でも、次第に彼女たちのこだわりにも興味を持って……という話しにはならなくて、ひじょうにすんなり、ギャルファッションを受け入れられる渡辺さんはやっぱり潜在的にギャル魂を持っていたのでしょうね。

そして、1年が過ぎます。結は就職活動をはじめることになります。
一方、四ツ木(佐野勇斗)は変化球を身に着けて活躍。順調にプロ選手の道を邁進しています。
第11週のサブタイトルのように、結の就職、四ツ木のプロの道と、大人の階段を1段階上がる週のようであります。
深刻な話しを入れながらも、佑馬の登場などで軽快に見せ、時間もビュンっと飛ばしていきます。
理屈抜きの部分は手慣れているのが根本ノンジ脚本。過去、いろんな作品で鍛えられたのでしょう。
ただ、打ち上げで、炊き出し200食作るのはむずかったと、佳純(平祐奈)などに言わせるのを見てると、栄養学校で炊き出しの献立づくりを急遽課題にして生徒たちを巻き込んでおきながら、結果、J
班だけしか防災訓練に参加しない不自然さも否めません。なんで課題で結の手伝いをしないといけないのかと反発する生徒がいてもおかしくなさそうなものにもかかわらず、そういう学校ドラマのようなものは描かない選択も興味深いです。商店街の人たちのメンツもほんとうにかなり少なくて、街の団結がまったく伝わってこない。ただ、この、とても小さなコミュニティのお話しであることが重要なのでしょう。小さな小さなコミュニティ、そして、ふだん注目されないような個人にフォーカスを当てることが重要なのだと思います。

余談ですが、渡辺家のお墓に刻まれた文字を見て、真紀が15歳、その前の早苗さんが36歳(たぶん、これが孝雄さんの妻でしょう)、その前の和子さん(たぶんお母さん)が57歳と渡辺家、短命です。渡辺孝雄さんが天涯孤独なのがわかります。孝雄さんのお父さんの名はこの面の向こう側に刻まれているのでしょうか。



※この記事は「おむすび」の各話を1つにまとめたものです。

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(C)NHK

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