<シジュウカラ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第12話ストーリー&レビュー
第12話のストーリー
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洋平(宮崎吐夢)とケリをつけ、岡野(池内博之)と二人、新たな人生を歩み始めた忍(山口紗弥加)だったが、どこか上の空な様子。そんな中、息子の悠太(田代輝)が久々に帰ってくる。もう子供ではない悠太から、自分の為に幸せになるように言われ…。忍にとっての幸せとは?恋愛、仕事、人生。多くのことに悩み、ぶつかり合ってきた不器用すぎる大人たちが、それぞれの道を歩み始める。そして忍と千秋は―。
第12話のレビュー
「シジュウカラ」最終回。愛情や苦しみを抱える大人たちがそれぞれの結末にたどりついた。
前回突拍子もない行動で視聴者を唖然とさせた洋平(宮崎吐夢)。今回、忍(山口紗弥加)たちを待ち構えていた彼が口にしたのは「慰謝料もらう権利、俺あるよな?」。何しに来たのかと思えば、目的はお金か……。
岡野(池内博之)から数枚のお札を差し出される洋平。財産を騙しとられて忍に頼らざるをえなかったのかとは思うが、お金をもらってそそくさと去る姿がなんとも情けなく悲しい。
その後、「綿貫洋平、自叙伝」というノートを息子の悠太(田代輝)の元に残した洋平。白のブリーフ姿で書いていたのがまたインパクトが強かったが、彼はノートに「俺は一人になる」と記していた。元妻に執着せず生きると決めたようで、ひとまずよかったと思う。
なお、ここまで洋平役の宮崎吐夢は本当に素晴らしかった。モラハラ夫ぶりに恐るべきリアリティがあり、本作を見応えあるものにしてくれた立役者だといえる。見事な怪演に心から敬意を表したい。
この12話では、洋平だけでなく岡野と冬子(酒井若菜)の自叙伝も語られた。
漫画家になる夢が叶わず編集者になった岡野。彼の目には忍と千秋が作り手でない自分を見下しているように映っていたらしい。実は根深いコンプレックスを抱えていた岡野。とはいえ、忍に「賞味期限切れの面倒くさい漫画家」と言ったのはひどい。彼が手にしていた指輪を忍がはめることはおそらくないだろう。
一方冬子の自叙伝は、男たちのそれよりも切なく悲しく響いた。10代のころからモテてかわいらしさを武器に生きてきた彼女。しかし、夫に暴力を振るわれ、息子も気づけば売春に身を落とし、家という場所は冬子にとっていつでも「闇」だった。
千秋が家賃用に準備していたお金を使い込んだらしき冬子。それにあきれたのか再び千秋は実家を出ていくが、別れに際して一緒にタバコをふかす親子二人。その姿になんとも心を揺さぶられた。いい母親とはどうにも言い難いが、それでも自分なりに息子と生きようとしていた冬子。いつかどこかで彼女にも光がさしてくれたら……と思う。
忍と千秋のことを語る前に、みひろ(山口まゆ)と悠太についても触れておこう。
人形作りという生きがいを見つけたみひろは、「先生も千秋も絵をやめられない人だよ」の言葉を残して千秋と別れる。彼女が元気になれたのは本当に喜ばしいこと。そして、久々に東京に帰ってきた悠太は、忍に自分のために幸せになってと伝えた。結局、綿貫家で一番しっかりした大人なのはこの一人息子ではないか。
そして、忍と千秋である。恋や人生に迷ってきた末に忍が選んだのは、やはり漫画を描くこと。彼女は一編の作品を描き上げてSNSにアップ。それはかつて千秋が心を救われた「ウサギなんて追いかけない」の続編だった。
なお、忍の新作を読んで「あたしがこれを佐々木さんと作りたかったのに」と言ったのは荒木(後藤ユウミ)。彼女は「ササキシノブ」名義で連載を目指そうと提案。とどのつまり、忍を理解している編集者は岡野ではなく荒木だった。
千秋の方は、実家を出た後にバイトしていたレストランも退職。(やめる際、いつも失礼な口を叩いていたバイト仲間の学生に「クソガキ」と言い放ったのが見事だった)。一人になった彼が選んだ道は“旅人”。しかし、旅先でスケッチをしていた際に星宙(榊原有那)が送ってきた忍の新作を見て、改めて絵を描きはじめる。
漫画が再び忍と千秋を繋げてくれた。描き上げた新作とともに忍の元へ帰ってくる千秋。彼が伝えた言葉は「漫画が好きです……先生が好きです」。ようやく忍と千秋は結ばれた。
かつて千秋のために泣いた忍。そんな彼女のために生きると決めた千秋。今やっと彼らは幸せだ。愛し合う二人が重ねた手の「ピース」のサインがそれを物語っていた。
翌朝、忍の瞳に一羽の鳥(シジュウカラ)の姿が映る。この先、年の離れた彼らの人生は楽ではないかもしれない。でも二人には漫画と尊い絆があり、鳥のように羽ばたくひとすじの希望がさしている。大丈夫。きっと生きていけるはずだ。
最後になるが、この最終回は本放送と「Paravi」の配信版で音楽が異なる箇所があった。本放送で響いたのはビートルズの「ブラックバード」。忍と千秋を明るくやわらかく包み込むような非常に心にしみいる選曲だった。
(文:シネマズ編集部)
※この記事は「シジュウカラ」の各話を1つにまとめたものです。
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