<明日、私は誰かのカノジョ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第11話ストーリー&レビュー
第11話のストーリー
>>>「明日、私は誰かのカノジョ」の画像をすべて見るハルヒ(藤原樹)との関係が一層こじれながらも、なんとか関係を保っている優愛(齊藤なぎさ)。しかし、下着姿の女性と眠るハルヒの画像が流出してしまい、優愛は、ハルヒへの憎悪を募らせ、ついに口論になってしまう。エスカレートし、罵り合いの末についに2人は―。
一方の萌(箭内夢菜)は、楓(高野洸)にのめり込み、大学を退学し、風俗での稼ぎを増やしていく。楓の誕生日を祝うために目標の額を稼ぐことができ、満足する萌。そして、楓の誕生日を祝うためにホストクラブへと向かうはずだったのだが…。
第11話のレビュー
長い夢から覚めた気分だった。ドラマ「明日カノ」第11話は、お金で“愛”を買ってきた萌(箭内夢菜)と優愛(齊藤なぎさ)がついに限界を迎える。
ホストクラブは、ほとんどの人間が生涯一度も足を踏み入れない未知の世界。そこでは一晩で、数十万〜数百万というお金のやりとりが交わされる。お気に入りのホストと少しでも長い時間を過ごすには、できるだけお金を使うしかない。だから必然的とも言うべきか、常連客の多くは高収入を得られる風俗嬢のようだ。
萌と優愛もそう。楓(高野洸)とハルヒ(藤原樹)、それぞれの担当ホストに心を奪われている彼女たちは本番を伴わない性行為と引き換えにお金を得て、その全てを彼らに“投資”する。側から見れば、歪な関係。だけど、きっと彼女たちにとっては心の隙間を埋めてくれるかけがえのない存在であって、誰にもその行為を否定する権利はない。
ハルヒと激しい喧嘩の末に一応仲直りした優愛、両親への罪悪感から仕事中に泣いてしまった萌。ふたりが想いを寄せる相手からの連絡を待ちながら、スマホを握りしめて眠りにつく姿が切なくてたまらない。
でも、そんな思いをさせているホストを一方的に責めることもはばかれる。下着姿の女性と眠るハルヒの画像が流出し、逆上してハルヒを罵る優愛(この時の齊藤なぎさの演技には引き込まれた)。
その時、ハルヒが優愛に放った「理想押し付けて、都合の愛情欲しがって、それが手に入らなかったらゴミみたいに吐き捨てる。ホストだからって何してもいいと思ってんだろ?恋愛ごっこ求めておきながら、俺らを見下して人間扱いしてないのはお前らの方なんだよ」という言葉も理解できるからだ。今まで悪い男に見えていたハルヒの抱えている苦しみや、弱さがこのシーンからひしひしと伝わってきた。
もちろん、彼女たちが自分のために身体を売ることを、“当たり前”のように思ってしまうのは褒められたことではない。だけどホストも、たとえ純粋にお金を得るためだったとしても、そのために努力をしている。生半可な気持ちじゃできない。優愛はその点を踏まえて、ハルヒの気持ちを尊重することはできていたのだろうか。
優愛をお金で買う客も、ハルヒをお金で買う優愛も、要するに「こっちはそれなりのお金を払ってるんだから、自分を気持ちよくさせろよ」という根本にある思いは同じなのだ(もちろん、優愛はハルヒに不快な思いをさせないために身だしなみを整えているのだから、おじさんたちと一緒にしてほしくないというのも分かるけれど)。
その点、萌は最後まで楓のことを人として大事にしていた。自分の思いを一方的にぶつけたり、無茶な要求をしたり、無理やりお酒を飲まされたり。そういうことは一切しなかった。楓のことが好きで好きで堪らない気持ちを一人で抱えて、呑み込んで、純粋に偉いと思う。
彼女が最後に何も言わず、楓から離れていったのも、純粋な客として彼と接することがこれ以上はできないと判断したからだろう。そんな萌が、今すぐ抱きしめてあげたいくらい愛おしかった。
だから、楓も恋心は抱かずとも萌のことを彼なりに大事にしていたのだと思う。前話で楓が言った「萌ちゃん飲み方すごく綺麗だし、七星も萌ちゃんの卓楽しいから着きたいって言っててくれてさ、それ聞いたらなんか俺も嬉しくて」という言葉は本音だったと思うから。
誕生日イベントの日、入り口で佇む楓も“お金”じゃなく“萌自身”を待っていたと信じたい。高野洸のどっちともつかない高度な表情が最後まで私たちを惑わせる。スーパー“シゴデキ”な彼の内面を少しでも暴きたかった(完璧なまでに楓というキャラクターになりきっているのに、彼の心情を内側に留める演技が凄すぎる)。だけど、萌が自らの意思で夢から覚めてしまったから、私たち視聴者ももう目覚めなきゃいけない。
「みっこの言う通り、大恋愛してきたよ」と笑顔でみっこ(品田誠)に報告する萌は今までで一番綺麗だった。みっこがそんな彼女を褒め称えるのも希望だ。いっぱい傷ついたかもしれないけれど、人生を振り返ったときに楓との時間はきっと財産になるはずだ。
これで良かったと思う一方で、箭内夢菜、齊藤なぎさ、高野洸、藤原樹が演じた人間味あふれる愛おしいキャラクターたちとの別れが寂しくてたまらない。「ホスト編」に登場した彼らをもっとフューチャーした完全オリジナルのスピンオフドラマを作ってほしいくらいだ。萌と同じように私たちもしばらくは喪失感を抱えながら過ごすことになるだろう。
しかも、ドラマ「明日カノ」自体がもうすぐ最終回を迎える。ちなみに原作の方はまだ連載中で、「ぬる……」と言って萌の元を去った優愛の生い立ちも描かれているので気になった方は是非読んでみてほしい。
※この記事は「明日、私は誰かのカノジョ」の各話を1つにまとめたものです。
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