<おむすび>第5週~7週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】


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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

CINEMAS+ではライター・木俣冬による連載「続・朝ドライフ」で毎回感想を記しているが、本記事では『おむすび』第5週~の記事を集約。
1記事で感想を読むことができる。

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もくじ

第21回のレビュー

糸島フェスティバルも無事に終わって、清々しいはずの結(橋本環奈)ですが、海辺で浮かない顔をしています。と、そこへ四ツ木(佐野勇斗)が来て、いつもここ(海)でさみしい顔をしていると気づいていて、その理由を尋ねます。

そこで結はようやく、1995年1月17日のことを語りだします。たぶん、蓋をして誰にも語らずにきたことだと思います。
「たぶん、あの日から」

第5週「あの日のこと」(演出:松木健祐)は震災が起こった瞬間が描かれました。その前には「このあと地震の描写があります」のテロップが入りました。先週の段階で、来週は地震の描写がありますと事前に告知もされていました。

阪神・淡路大震災からは来年で30年ですが、東日本大震災からは14年、今年はお正月に能登半島地震が起こり、その記憶はまだ強く残っていますから、テロップは配慮でしょう。

主題歌に「震えたっていいよ」という歌詞があったことに気づくと、どき、となります。

90年代、神戸に米田家が暮らしていたことは第4週で描かれていました。
日めくりカレンダーの日付は95年1月16日。歩(少女期:高松咲希)真紀(大島美優)が買い物に出かけて、結(幼少期:磯村メアリ)にもお土産をくれました。
その晩、地震が起きました。テレビが倒れたり、天井が崩れたり、かなり大きな揺れです。
気付いたときには、歩が結の上に覆いかぶさってかばってくれていました。歩っていいお姉さんだったんですね。

その後、小学校に避難します。そこにはたくさんの人達が避難してきていますが、真紀ちゃんはいません。

おむすびを差し入れに持ってきてくれた人がいましたが、結は冷たいから「チンして」とせがみます。
配ってくれた女性は雅美さんといいます。電気もガスも止まってしまってチンできないし、街も道路もめちゃめちゃで時間がかかって冷めてしまって「ほんまにごめんな」と謝ります。
生まれも育ちも神戸が地震で崩壊したのを見て、雅美さんは胸を痛め、泣いていますが、結は幼くて、地震に遭ったこともよくわかっていず、学校が休みであることを喜んだりしていて。だから、おにぎりが冷たいことも、理恵のことも理解できていないのです。

幼いがゆえの無知の残酷さ。その残酷さを主人公が背負います。なかなかヘヴィな内容です。

今週、阪神・淡路大震災当時、小学生だった松木健祐さんが演出を担当しました。

松木さんはこのようなことを語っています。

「主演をしている橋本さんが震災後に生まれた方であるということです。震災後に生まれた方が震災のことを悩みながらも一生懸命語ろうとする姿は、撮影していて胸を打たれました。このドラマをやる意味のひとつだと感じています」
(Yahooニュースエキスパート 「おむすび」激変。阪神・淡路大震災を描く重要な週の演出を、あえて若手に託した理由 」)


震災後に生まれた方が震災のことを悩みながらも一生懸命語ろうとする姿、これは松木さんにも当てはまるのではないでしょうか。

その一方で、雅美役を演じたのは、神戸で実際に被災した経験者である安藤千代子さん。いまも神戸で震災の語り部の活動を行っています。

いろいろなことが過去になっていき、体験した人が少なくなっていくなか、知ってることを伝えようとすること、知らないことを知ろうとすること、それぞれの営みの大切さを感じます。


※この記事は「おむすび」の各話を1つにまとめたものです。

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