『ハウルの動く城』を深く読み解く「8つ」のポイント



3:荒地の魔女の老いた姿が証明しているものとは?



荒地の魔女は、ソフィーとは反対に自分を若く見せていたようでしたが、階段を上るだけでも汗だくで息も絶え絶えになり、魔力を失うとソフィー以上に歳をとっていそうな、介護も必要そうな老婆になってしまいました。それからは性格が丸くなったようでいて、葉巻を部屋の中で堂々と吸うという横暴さ、ハウルの心臓を付け狙うという執着心は持ち続けていました。

そんな荒地の魔女であっても、ソフィーの「お願い、おばあちゃん」と言いながらの心からの抱擁(愛情)によって「仕方ない、大事にするんだよ」とハウルの心臓(カルシファー)を渡してあげるという心変わりをしています。



荒地の魔女は“見た目だけ若くしてもしょうがない”“もともと持っていた欲望は年老いてもそんなに変わらない”ことの証明でもありますね。そうした価値観を変えてしまうのは、いつもソフィーのような“愛情を持った誰かの行動”なのかもしれません。

余談ですが、スタジオジブリのアニメーターがソフィーをかわいらしいおばあさんに描こうとしていて、宮崎駿監督が「容赦無く、年寄りにしてほしい」と注文したことがあったそうです。それを聞いた原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズは「監督がこの物語の本質を完全に理解している証拠だわ」と感嘆の声をあげたのだとか。老いを肯定するものの、その見た目や、階段を上る大変さといった、老いのネガティブな面も逃げずにアニメーションで描いていることも、『ハウルの動く城』の美点と言えるでしょう。

→目次へ戻る

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

© 2004 Studio Ghibli・NDDMT

RANKING

SPONSORD

PICK UP!