『ハウルの動く城』を深く読み解く「8つ」のポイント
8:細田守監督の作品に『ハウルの動く城』の経験が反映されていた?
※以下からはアニメ映画版『時をかける少女』のネタバレに触れています。そちらを観たことがないという方はご注意を!『ハウルの動く城』の監督は、実は『バケモノの子』や『未来のミライ』の細田守監督がもともと手がける予定だったというのは有名な話です。
細田守監督は実際に『ハウルの動く城』の企画への参加を表明し、脚本やキャラクターや美術などの準備作業は進んでいたものの、東映アニメーションとスタジオジブリの制作スタイルの違いや、尊敬する宮崎駿監督の存在がプレッシャーになりすぎていたため行き詰まってしまい、細田守監督は結局降板、スタジオジブリから離れることになってしまったのだそうです。
興味深いのは、その後に細田守監督が手がけた作品です。東映に復帰した第一作「おジャ魔女どれみドッカ〜ン!」の第40話「どれみと魔女をやめた魔女」は“将来を決める重大な選択肢のどちらを選ぶか”という物語になっており、主人公のどれみの姿は『ハウルの動く城』の監督という大役を任された細田守監督の“迷い”を少し連想するところがあるのです。
※「どれみと魔女をやめた魔女」についてはこちらの記事でも紹介しています↓
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さらに、『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』は、細田守監督自身が『ハウルの動く城』の時の体験が元となっていると明言しています。それを思うと、舞台となるオマツリ島はスタジオジブリのメタファーにも見えますし、麦わら一味(細田守監督とスタッフたち?)が挑む無理難題の数々、仲間割れをしていく様子も何かしらの含みを感じます。
※『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』はこちらの記事でも紹介しています↓
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そして、ミニシアター系の上映からロングランヒットとなり、幅広い層から絶賛されることになるアニメ版『時をかける少女』には『ハウルの動く城』を連想するセリフがあります。それは、真琴と千昭の別れのやり取りの「未来で待ってる」「うん、走って行く。すぐ行く」……これは、“タイムスリップをして”少年の頃のハウルを見たソフィーの言葉「私、きっと行くから、未来で待ってて!」にそっくりではありませんか!
しかも、『ハウルの動く城』のソフィーとハウルは最後にキスをして映画が終わった一方、『時をかける少女』の真琴と千昭は最後にキスをしませんでした。 “千昭はなぜ最後にキスをしなかったのか”ということはよく議論の対象になりますが、実は『ハウルの動く城』のことがあってのこと、そのアンチテーゼとしての展開だったのでは?と考えたくもなるのです(これは筆者の勝手な想像にすぎませんのでご注意を)。
結果として『時をかける少女』が素晴らしい作品となり、今は細田守監督が日本を代表するアニメ監督になって嬉しい限り。『ハウルの動く城』は製作過程および物語に歪(いびつ)なところがあるのも事実ですが、やはり日本のアニメーションの歴史上で重要な作品であり、さらなる名作が生まれるきっかけにもなっているのです。
参考図書
・ジブリの教科書13 ハウルの動く城
・ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔
・ロマンアルバム ハウルの動く城
(文:ヒナタカ)
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