『ハウルの動く城』を深く読み解く「8つ」のポイント
2:“老い”を肯定している物語だった
『ハウルの動く城』の原作小説「魔法使いハウルと火の悪魔」の作者であるダイアナ・ウィン・ジョーンズは、ソフィーにかけられた呪いについて「若いソフィーが歳をとったのは不幸だけど、不幸中の幸いでもある。若い女の子だったらできない大胆なことも、ソフィーはできるようになります。彼女は歳をとって解放されたのよ」と答えています。
事実、ソフィーは活発な性格の妹のレティーに「一生あのお店(帽子屋)にいるつもりなの?」と聞かれて「お父さんが大事にしていたお店だし……私、長女だから」などと答えており、自分の本当にしたいことよりも“長女の自分がお店を継がなければならない”という責任感から、望まない人生を選ぼうとしていたようでした(原作小説ではその状況がさらに細かく書かれています)。
しかしながら、ソフィーは呪いをかけられ老婆になったことで皮肉にもその重責から逃がれ、かつお城の部屋を掃除する仕事も“自分の判断”で手に入れて、自身を助けてくれたハウルに再会して恋人にもなれるのです。
また、宮崎駿監督も「呪いが解け、おばあちゃんが若い娘に戻って幸せになりました、という映画だけは作ってはいけないと思った。だったら、年寄りは皆、不幸ということになる」「大切なのは彼女(ソフィー)が年を忘れること。原作には、いつ少女がもとに戻るか書いていない。作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズが言いたいのは、歳は問題じゃないということだ」とも語っていました。
総じて、宮崎駿監督と原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズの意思は “老いることは不幸ではない”で一致しています。現実の社会では“若さ”が価値あるものとして捉えがちになってしまいますが、『ハウルの動く城』ではむしろ老いたことで束縛された人生から解放されることもある(そもそも年齢は関係ない)んだという……究極的には“老い”を肯定している物語と言っていいでしょう。
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