『ハウルの動く城』を深く読み解く「8つ」のポイント



5:ハウルは実はダメ男だったのかも?



魔法使いのハウルの姿は美青年そのもの、本作を観た女性にとって憧れの存在になっていそうですが……はっきり言ってハウルはダメ男でもあります。

序盤に「南町のマーサ(原作小説ではソフィーのもう1人の妹の名前)って子、心臓とられちゃったんだって」と語られているのは、ハウルがプレイボーイで“女の子の心を奪う”という噂がたてられたからでしょう。ハウルがドロドロになりそうな時はマルクルに「闇の精霊を呼び出してる!前にも女の子にフラれて出したことがあるんです!」と言われており、落ち込むとなだめるのが超めんどくさい性格であることもわかります。



他にも、身だしなみは綺麗であってもお風呂場が超汚いということも、“自分以外の美には無頓着”なハウルの性格が現れまくっています。さらには、自分が行きたくないからと言って、ソフィーに代わりに魔女のサリマンのところへ向かわせたこともありましたね。

また、世の中の女性がうっとりとしたであろう、ハウルがソフィーの手をとって“空中散歩”をするシーンの絵コンテには「これが誤解を生むのだ」と言う注釈がつけられていたのだそうです。作り手にも、ハウルがダメ男であるという認識があったのでしょう。



事実、宮崎駿監督も「あの人(ハウル)と結婚したらエライ目に会うと思うんですけど」と言っていたことがありましたし、原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズも「ハウルと結婚したいという声がとても多いの……きっと苦労すると思うのに……」と読者を心配していたこともあったようです(原作ではさらにハウルのプレイボーイな面やダメ男っぷりが書かれています)。

しかしながら、ソフィーはこのハウルのダメなところを含めて愛します。ハウルが「僕はもうじゅうぶん逃げた、ようやく守らなければならない者ができたんだ」と言って戦地に向かった後、ソフィーは「あの人は弱虫がいいの」とその“弱さ”をも肯定していたようですね。



また、ハウルは「美しくなくちゃ生きている意味がない」と言ってしまいソフィーを傷つけてしまっていましたが、その実ソフィーの老婆になってしまった姿については何も言及していません(それは前述したように自分以外の美には無頓着であるから)。

それどころか、最後に(若い姿に戻っても)髪の色がそのままだったソフィーには「髪の毛、星の光に染まっているね」と、その美しさを肯定したりもします。悔しいですが、ハウルはやっぱり“天然”で性格を含めてイケメンなところもありますね。



余談ですが、様々な呪いグッズで埋まっていたハウルの部屋について、宮崎駿監督は“今の若者たちがフィギュアを集めて飾るのと同じ感覚”とスタッフに説明していたのだとか……ハウルは、結構オタク気質でもあったのかもしれません。

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