映画コラム

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2021年03月12日

碇シンジ“100億の男”へ!!『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の興行分析「これまでとこれから」

碇シンジ“100億の男”へ!!『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の興行分析「これまでとこれから」


『シン・エヴァンゲリオン劇場版』レビュー

先にも書いた通り、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は“覚悟”と“落とし前”をしっかりと感じることができる映画となっていました。

映画は大きく分けて三幕構成(序破急)と言えるでしょう。

公開前日に解禁されたタイトルまでの12分間から、意外な人物の意外な登場から始まる第一幕は、牧歌的なシーンもふんだんに描かれ細かい笑いとファンへのサービスとサプライズに溢れていました。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の終盤)ではある種の混乱と絶望感だけをファンに与えた形になりましたが、この『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の第一幕ではそんな見てきた人間の心を思わぬ形で穏やかにするエピソードが続きます。ここで碇シンジの再生が描かれます。

基本的にテレビシリーズからずっと傷つき続けてきた碇シンジ。その都度、様々な究極的な事態に直面することで自分の意思を強く持ち直し続けてきましたが、今回の心の再生はどこかそういった“力技”ではない形の再生という感じがします。この第一幕のファンサービス&サプライズは25年間“エヴァ”を追いかけてきた人たちへのささやか返礼であり、次の第二幕へつなぐためのアイドリングとなりました。

続く第二幕は“エヴァ”がロボットアニメ、SFアニメであることを再確認させてくれる、アクションパート。『宇宙戦艦ヤマト』から『機動戦士ガンダム』を経て確立されてきた“ロボットアニメの盛り上がり”を『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ではこの第二幕に据え、映画全体に躍動感を与えました。

この第二幕で描かれる人類の未来をかけたヴィレVSネルフの総力戦は、ド迫力の一言。劇場第一主義を貫き通して、大画面で見てもらうために創られたシーンといっていいでしょう。実際、ここでのテンポアップと勢いの加速があることで、結果2時間35分の映画を全く弛緩することなく見続けることができる構造になっています。

そして、やはり“エヴァ”と感じ第三幕。一幕目でも『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』に登場しなかった人たちが多数登場しますが、こちらの第三幕でも新事実・新アイテムがどんどん出てきます。しかし、見ている人間を“煙に巻く”という語り方ではなく、物語の核心(核“新”&核“シン”)に迫った結果というふう私は感じました。

そして、最終盤でテレビシリーズの第1話から常に語られ続けられてきた碇シンジと碇ゲンドウ父子の総括に物語はシフトしていきます。さらに庵野秀明総監督とこれまで“エヴァ”を見続けてきた人たちへの心の収束と解放へ向かっていくというに構造には見事なまでに“しっくり”と来るものがありました。

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