(C)吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会
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映画コラム

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2021年10月29日

『アイの歌声を聴かせて』が大傑作である5つの理由|過去最高の土屋太鳳が爆誕!

『アイの歌声を聴かせて』が大傑作である5つの理由|過去最高の土屋太鳳が爆誕!

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2021年10月29日より、『アイの歌声を聴かせて』が公開されている。結論から申し上げると、本作は後述するさまざまな要素が見事に融合した、年間ベスト級のアニメ映画の大傑作だった!

楽しく元気になれる映画を求める方には大プッシュでおすすめしたいし、観る人を選ばない万人向けの作品としても最高峰だろう。主演の土屋太鳳を筆頭とした豪華なボイスキャストも完璧にハマっているので、それぞれのファンにも是が非でも映画館で観てほしいと願うばかりだ。音響監督の岩浪美和が監修を務めた特別音響調整版も全国7劇場で展開しているので、こちらで観てみてもいいだろう。

以下より、『アイの歌声を聴かせて』の魅力をたっぷりと記していこう。ネタバレはないように書いたつもりであるが、本作は「観ればわかる」ストレートな面白さと感動に満ち満ちているので、予備知識を入れたくない方は先に劇場へと駆けつけてほしい。きっと「試写会満足度98%」の触れ込みが伊達ではないとわかっていただけるはずだ。



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1:「ポンコツなAI」だからこそ成立したミュージカル

あらすじから簡単に記そう。いつもひとりぼっちでいた高校生のサトミは、ある日シオンと名乗る転校生から唐突に「今、幸せ?」と質問される。実は彼女は人間ではなくAI(ロボット)で、その後も事あるごとにサトミを幸せにしようと行動するのだった。

画期的なのは、本作が日本の高校を舞台にしたミュージカル映画であり、しかも「ミュージカルでいきなり歌い出すのって変だよね」という違和感を、設定から解消してしまっていることだ。何しろヒロインは「ちょっぴりポンコツ(?)なAI」で、「ひとりぼっちの女の子を幸せにするため」という名目で、次々とエキセントリックな言動ばかりをしまくり、時には廊下を歩きながら意気揚々と歌い始めるのだから。

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このキャラクターを人間の女の子でそのままやってしまうと(劇中でも彼女がAIだと知らない同級生に言われている通り)「頭おかしいんじゃないの?」となりかねない。だが、ポンコツなAIであれば人間ではありえない突飛なキャラクターにも納得できるし、「いきなり歌いだす」ことにも違和感がないし、さらに「ひたむき」や「一途」というキャラクターの魅力に転換することもできている、と何重にもプラスの効果を生んでいるのだ。

さらに、このAIのシオンは歌いながら、手を触れずに同様にAIが搭載されているピアノを弾いたりスピーカーを鳴らしたりもできる。ディズニーのミュージカルアニメ作品によくある「鳥や動物たちも合わせて歌って踊ってくれる」に似た演出にも説得力を持たせている、というわけだ。さらに、初めの方のミュージカルシーンでは、いきなり歌い出すことに「引いてしまう」戸惑いを登場人物と共有できるため、物語に入り込みやすくなっていた。

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通常のミュージカル映画で公衆の面前でいきなり歌い出すのは「そういうもの」だと受け入れる土台があるが、それを日本のアニメに安易に持ち込んでしまうと違和感バリバリになってしまいかねないだろう。だが、本作はAIの設定と、「天真爛漫かつめちゃくちゃ」だけど「ひたむきかつ一途で愛らしくて」しかも「楽しそうに歌う」というキャラクターをもってミュージカルを描くというアイデアがまず素晴らしく、アニメそのもののクオリティも合間って作品に結実しているのだ。

なお、作画を担当した制作会社J.C.STAFFは『とある魔術の禁書目録』シリーズや『ハイスコアガール』などの人気アニメで名前が知られている。原画、動画、仕上げ、撮影などを一貫して内製できるスタジオであり、それがあってこそミュージカルシーンの繊細な動きを作り出せたのだそうだ。さらに、劇伴およびミュージカルの作曲・編曲をしたのは、舞台版『黒子のバスケ』の音楽や『ACCA13 区監察課』など多数のアニメの劇伴を担当している音楽家の高橋諒。よく動く美しいアニメとシンクロする、メロディアスで耳に残る楽曲そのもののクオリティを期待しても、きっと裏切られないだろう。

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ちなみに、吉浦康裕監督は初めに歌われる楽曲「ユー・ニード・ア・フレンド〜あなたには友達が要る〜」について、本作を代表するような楽しい曲である一方、その歌詞そのものは「『幸せになるためには友達がいるよね。じゃあ友達が欲しいって言おう!』という、実はとても押しつけがましい内容なんです(笑)」と語っている。



対して、終盤に歌われる「You've Got Friends〜あなたには友達がいる〜」はそれと完全に「対」でありながら「リフレイン」的な内容でもあり、素直に響く曲にしたいと吉浦康裕監督は考えていたという。初めこそ押し付けがましさを感じていたが、後には素直に受け入れられる、と観客がAIおよびミュージカルに抱く印象が、登場人物の気持ちとシンクロしているというのも上手い。つまり、ミュージカル要素がただの背景ではなく、物語とも不可分なものになっているのだ。

なお、これらの劇中歌の作詞を手がけたのは『アイドルマスター』や『文豪ストレイドッグス』などのアニメシリーズでも知られる松井洋平。今回はAIのシオンというキャラクターのセリフという側面も意識して歌詞の制作をしていたそうで、「歌が出てくるシーンとシーンの間にある話がシオンの成長過程を描いていますので、この歌はなぜこの言葉遣いなのか、なぜこういうニュアンスなのか、シオンはなぜこういう歌い方をしているのかと意識して観ていただけると面白いと思います」と松井洋平は語っている。なんとなく観ていてももちろん楽しいが、それぞれの楽曲の歌詞に注目して観るとさらに感動が増すだろう。

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