アニメ好きライターが選ぶ2021年TVアニメBEST10|作り手のパッションに祝福を



Ⓒ和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会

自分のブログでもない、ニュースサイトにも配信される場所で「俺のベスト」を書くことにいまだ抵抗がある。どこぞの得体のしれないライターが選んだアニメベスト10なんて興味ないだろうな、と。

ただありがたいことにシネマズプラスは「まあそういうの気にせず、好きにやっちゃって」という、ライターにとってはありがたい頭のねじが外れたメディアだ。だから自由に、感情のままに書かせてもらおうと思う。筆者が今年ハマりすぎてどうにかなりそうだったTVアニメBEST10を。

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第10位「吸血鬼すぐ死ぬ」

吸血鬼とそれを退治するハンターのバトルを描く……。あ、間違えた。ちょっとの衝撃で塵となってしまう吸血鬼・ドラルクと、本来対峙するはずの彼となぜかコンビで活動していくこととなったバンパイアハンター・ロナルドの日常を描いたギャグアニメが「吸血鬼すぐ死ぬ」だ。



吸血鬼のイメージといえば、鋭い牙、黒ずくめの衣装、そして血。しかし同作に出てくる吸血鬼たちは、これらのイメージとはかけ離れたものばかり。しかも「内に秘めた自分の性癖を吐露させるのが趣味」とか「野球拳をこよなく愛する」とか「マイクロビキニで人類を支配する」とか、基本的にわけのわからない、救いようのない変態ばかりなのだ。血なんてほぼ流れないし、緊張感のカケラもない。

またロナルドの仲間であるハンターたちも、超がつくほど個性的なメンツばかりだ。一度見たら忘れられない濃さなのだが、テンポの良い展開が胃もたれ、胸やけを起こさせない。

もう何も考えたくない、原稿に煮詰まって現実逃避したい。そんなときにけっして褒められた存在ではない変態たちと個性豊かな仲間たちが届けてくれる笑いに、なにかが狂い始めているかもと思いつつも救われた。

人生において、わっかりやすいくだらなさが必要なときもあると改めて実感させてくれたアニメだ。

第9位「Vivy-FluoriteEye'sSong-」

AI(人工知能)は、アニメでよく取り上げられる題材だ。社会を便利に豊かにしてくれるAIがいる世界観は、希望にあふれている。その反面、その便利さに甘んじた人間たちが自分で考えることをやめたり、有能さに危機感を覚えたりと、共存の難しさもたびたび描かれてきた。「Vivy -Fluorite Eye's Song-(以下、Vivy)」も、AIと人の共存に真摯に向き合った作品だったと思う。



物語は、AIが人類を抹殺している100年後の未来から始まる。この絶望を防ぐためにその未来からやってきたというAI・マツモトと主人公のAI・ヴィヴィが、AIと人間の関係を大きく転換させる出来事を変えていくというSFストーリーだ。

この作品の大きな特徴として、「歌」が挙げられる。その理由は感情を理解できないと言われるAIに「歌でみんなを幸せにする」という使命を与えているからだ。単に人を感動させるだけなら、プログラム通りに実行すれば叶いそうなものである。しかしプログラム通りに歌うヴィヴィは、人の心に響くパフォーマンスをするには至っていない。「心をこめて歌う」という目標を持たせ、プログラムに頼らない選択をAIに課したところに、この作品の体温を感じた。

一方でヴィヴィは、あくまでAIなのだと実感させられるシーンも多々ある。不自然なほどになめらかな質感の肌やガラスのような瞳が、彼女が人間とは異なる存在だと印象づけていた。

「Vivy -Fluorite Eye's Song-」が描く世界は、どこかまだ遠いもののように思える。しかしAIとの共存はすでに、私たちの身近なところで始まっている。いま以上に便利になったとき、私たち人間はどうあるべきなのかを考えさせられた作品だった。

第8位「ブルーピリオド」

痛いのに、どうしようもなく熱かった。



「ブルーピリオド」は、絵を描くことに目覚めた高校生が美大合格を目指す物語だ。おそらく山口つばさ氏の原作漫画を読んでいるファンからしたら、少しもの足りなさを感じるアニメ化だったと思う。原作未読の筆者ですら、展開の深掘りに少し疑問を感じる部分があったくらいだ。しかしそういう気になる部分を吹き飛ばす、痛みとパワーが同作にはあった。

自信のなさを隠すために虚栄を張る。目指すべきところが見えない、何を信じたらいいかわからない不安を抱く。そんな主人公の八虎を通して、自分を見ている感覚があった。

しかしこの共感が、徐々に嫉妬へと変わっていく。八虎は凡庸で未熟な自分から目を背けない「努力の天才」だった。今の自分にできることを地道に重ねながら、絵の力を磨き続けていく。周囲を圧倒する勢いで絵を描くことにのめり込んでいく八虎を見て、いかに自分の「好きを仕事に」がペラペラなのかを突きつけられた。そして自分の未熟さを思い知らされる痛みは、話数を重ねるごとに増していく。

しかしこの痛みを味わえている自分がいることにも気づかされる。「まだやれることはある」と前を向かせてくれる。

「背中を押す」どころか「全力で煽ってくる」、ブルーピリオド。その熱さの先にある世界を見届けたいと思える作品だった。

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第7位「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」

登場人物が言っている内容の8割がたを理解できていないのに、「おっっっんもしろ!!」となったのが、「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」だ。



まず映像にぶん殴られる。「僕のヒーローアカデミア」「文豪ストレイドッグス」「ノラガミ」などアクションに定評のあるボンズと、「宝石の国」「BEASTARS」などCGアニメの新時代を更新し続けているオレンジがタッグを組んだだけあって、絵が画面から飛び出てきそうなほどの迫力を放っていた。

また往年のゴジラを知らず、かつ話の展開を8割がた理解できていない筆者でも、「なんかとんでもないことが起こる」と直感できる演出が物語の端々に感じられた。ちなみに筆者が受けてきた教育を無駄にしている説もなくはなかったため、念のため理系の賢い知り合いに「内容理解できてる?」と確認したところ、「あれは物理超えてるのでわからん」「質量保存の法則の世界の住人から抜け出さない限り理解は無理」という解説が返ってきた。たぶん分かってなくて大丈夫ということだろう。

第10話で共通言語ともいえるゴジラのテーマがかかった瞬間は、もはや理解できるかうんぬんの話ではなかった。最悪が迫っているのに、猛烈な高揚感が全身を駆け巡る。



それからオープニング映像も、筆者がこのアニメにどっぷりハマった大きな理由だった。アニメのシーンのコラージュ的活用。その中にデザインとして溶け込むスタッフクレジット。このカッコいいオープニング見たさに毎週テレビにくぎ付けになっていたところもある。

話の展開がわからなくたっておもしろいものはおもしろい。本来のアニメの楽しみ方に立ち返らせてくれた作品だった。

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