アニメ好きライターが選ぶ2021年TVアニメBEST10|作り手のパッションに祝福を

第1位……の発表の前に「2021年アニメHOTトピックス」

第1位の発表の前に、ランキングには入らなかったものの2021年を象徴すると筆者が思っている作品についても紹介したい。

何度だって観るよ、大好きだもん! 2021年に2回の再放送「よりもい」

2020年のコロナパニックのおかげで、昨年から過去作の再放送も盛んなアニメ界。とはいえ、年に2回も再放送がある作品はそうない。2018年1月期に放送された「よりもい」こと「宇宙よりも遠い場所」は2021年、1月期と10月期に再びテレビの電波にのった。

再放送は、他の新作アニメよりも存在がかすんでしまう。しかし「よりもい」は、何度だって観たいと思わせる引力がある。4人の女子高生が自分で選んだ新たな一歩に、何度だって胸が熱くなる。



2022年2月には同作の制作陣が手掛ける劇場アニメ『グッバイ、ドン・グリーズ』の上映もある。ムビチケ特典のクリアファイル裏を見て泣いたのはここだけの話だ。

こんな再放送、あってたまるか!あったけど 「ポプテピピック」

2021年の再放送作品として、このクソアニメにも触れておこう。「ポプテピピック」だ。

そもそもこの作品は、2018年の初回放送から再放送の形をとっていた。CMを挟んだAパートとBパートで同じ内容を放送していたからだ。とはいえ、ただの再放送でもなかった。A、Bパートで声優を変え、毎週それを繰り返していたからだ。そのため「声優の無駄遣い」という声がSNSで多数見受けられた。あと、「声優の蒼井翔太さんは、大切な人が人質にでもとられているのか」といった声も。

そして、2021年10月の再放送。やつらが大人しく再放送するとは思えなかったとはいえ、また声優を入れ替えてくるなんて誰が想像できただろうか? 「ポプテピピック 再放送(リミックス版)」として深夜のテレビにやつらは戻ってきた。再放送をリミックスすな。


ちなみにこの記事を書いている12月26日の深夜に、第2シリーズの制作が発表された。は?

できることなら派手にスタートしたかった……「鬼滅の刃」

2021年2月に新シリーズ「遊郭編」がスタートするという発表がなされた「鬼滅の刃」。9月の「竈門炭治郎 立志編」の特別編集版+劇場版の「無限列車編」ときて、「もう10月放送しかないじゃん!」と思った人も多いのではないだろうか。



蓋を開けてみたら、確かに10月には始まったものの、それは「無限列車編」だった。煉獄さんが無限列車に向かうオリジナル前日譚。ストーリーやキャラクターの個性をより補完する追加カット。とても贅沢なTVアニメとなっていた。

ただ筆者は、できることなら「遊郭編」がすんなり始まってほしかったという本音を抱えている。もちろん「無限列車編」がTVアニメとして放送されたことで、LiSAの主題歌とこれまた目が飛び出るほどのクオリティを放ったオープニングとエンディングと出会えた。ただ12月に始まった「遊郭編」の鮮やかな色彩やコメディと不穏な空気のバランス感が光る映像を観ていると、どうしてもこれを10月から観たかったと思わずにいられない。

なにより映画館で何度も涙した煉獄さんとの別れを、劇場版のテレビ放送という形で再び味わい、さらにTVアニメでも突きつけられたのだ。シンプルにしんどい。自分でも思う。なんてめんどくさいファンなのだろうか、と。

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第1位「SK∞ エスケーエイト」


ンッッッパッッッッッッッッッッッッッッッッション!!!!!!!!

「SK∞ エスケーエイト」は、この一言に尽きる作品だった。

たださすがにこの一言で1位の作品紹介を締めくくるとライターとして問題ありなので、少し冷静になろうと思う。



この作品は、「スケボー×バトル×青春」という3つの要素をかけあわせた、一見理解できそうでできない絶妙なアニメだった。始まってからも、その絶妙なラインは保たれたまま。まずスケートボードでのバトルが、イメージしていた世界とあまりにもかけ離れていた。夜な夜な危険な鉱山を舞台に、Sと呼ばれるレースで「大切なモノ」を賭けて闘うなんて、想像しろと言われても無理だ。

ただそのレースがあまりにも刺激的だった。ストリートカルチャーとしてしか認識していなかったスケートボードの新たな一面を目撃した気持ちが味わえたからだ。実際に同作を指揮した内海紘子監督は、Web Febriのインタビューで「スケボーで新しいレースバトルを描きたかった」「スケートボードの可能性を無限に感じられるようなレースバトルにした」と語っている。まんまと内海監督の戦略にハマった筆者だ。

同作の魅力は、登場人物の関係性にもある。スケートボードを「楽しい」と共感できる喜び。夢中になるからこそ、周囲が見えなくなってしまう人の鈍感さ。初心を忘れ目的を見失ったときの人の脆さ。これらが、スケートボートでつながったキャラクターたちの関係性の変化を通して描かれる。純粋に「楽しい」でつながったキャラクターたちが、スケートボードを極めるなかで感情をかき乱し合う様子も刺激的だった。

内海監督は過去に手掛けた「Free!」や「BANANA FISH」でも、関係性の変化の部分でその手腕を発揮している。内海監督の手中で踊らされていることがうれしくなるくらい、エスケーエイトに夢中になっていた。

また同作のすごいところは、オリンピックで答え合わせができた点にもある。筆者はオリンピック開催には反対派で、今も運営体制や資金の使い方に疑問を抱いている。しかし、スケートボードだけはどうしても我慢できずに観戦した。そこで見たのは互いの技をたたえ合う選手たち。レキやランガが体現していた「スケボー、サイコー、楽しい!」は脚色ではなく現実なのだと、なんだかうれしくなった。

さらに嬉しすぎることに、同作は新作アニメプロジェクトが始動している。筆者はあまりの嬉しさに、発表で泣くという初めての体験をしてしまった。サイコーの向こう側って、まだあったんだ……。またしばらく生きる理由ができた。ありがとう、エスケーエイト。ラブアゲイン。

2021年オリジナルアニメから伝わってくる、作り手の「これ、やりたい!」

自分の中のランキングを振り返ってみると、オリジナルアニメが上位5位までを占めるという結果だった。オリジナルアニメは始まってみないとわからない怖さがある。楽しみにしていたけれども、残念ながら波長が合わずという作品も少なくないし、その逆もしかりだ。

ただ2021年に放送されたこのBESTに入ったオリジナルアニメのほとんどに筆者は、第1話で心を鷲掴みにされた。そして最初から最後まで、子どもの頃に戻ったかのようにテレビに張り付いて観ていた。

なぜそんなにも夢中になれたのか。それは作り手の「これ、やりたい!」が伝わってくる作品だったからだ。どんな作品にだって、作り手の想いはつまっている。ただ今回挙げた作品の多くは、あらゆる要素が含まれる、一歩間違えれば情報過多で収集がつかなくなる恐れのあるものだった。しかし、作品としてのまとまりが素晴らしかった。その背景には「このメッセージを伝えたい」「自分たちがいいと信じるものを作ろう」と同じ方向を向き制作に臨むアニメの作り手たちの姿がある気がしてならない。

そんな作り手の「やりたい!」を受け止めた瞬間に、筆者もそのアニメを作る一員になれた気が味わえた。そういう時間を届けてくれる作り手の皆さんに、筆者はただただ感謝したい。

2022年も、コロナの現状を考えると日常は取り戻せないかもしれない。でもそんな元通りにはならない日常に落ち込んだときにきっと、作り手の「やりたい!」に巻き込まれる感覚が気持ちを前向きにさせてくれると思っている。来年もたくさんのアニメに巻き込まれていきたい。

(文:クリス)

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