「生きるとか死ぬとか父親とか」第12話ネタバレ感想:ついに家族になった蒲原家にカンパイ!そしてありがとう!
第4話あらすじ&感想
第4話あらすじ
トキコ(吉田羊)のエッセイが掲載された銀座のタウン誌『銀座百点』。それを探しに父(國村隼)と二人で銀座を訪れたトキコ。しかし、最近の銀座はすっかり様変わりしてしまい、思い出の店がいくつも移転したり、なくなったりしていた。何とかお目当ての『銀座百点』を見つけ喜ぶ二人は、早めの夕食を取ることに。店に入るなり早速、掲載されたトキコのエッセイを読む父。そこには、父と母(富田靖子)の出会いの話が書かれていて……。
第4話感想
「トッキ―とヒトトキ」
今週のお悩み相談コーナー
ラジオネーム:若いながらもモヤシありさん(女性)
私は21歳の大学生です。東京生まれの東京育ち、父も母もそれぞれの祖父母も東京生まれのいわゆる江戸っ子です。
なので、故郷といえば東京しかなく、私はこの故郷が大好きでした。
ところが、最近はあまり好きではなくなってしまいました。
オリンピックに向けた再開発をきっかけに、自分が好きだった場所がどんどん無くなってしまい、なんというか… 喪失感みたいなものを感じています。
私が子どもだったころの街の面影は、もうほとんど残っていません。
トッキーさんも東京生まれですよね?
トッキーさんは変わっていく東京に寂しさや喪失感のようなものを感じたことはありませんか?
もしあったとしたらその感情とどう向き合っていますか?
何かいいアドバイスがあったら教えてください。よろしくお願いします。”
はい、蒲原トキコ(吉田羊)と東アナウンサー(田中みな実)の声を背景にして東京タワーの映像が入るラジオコーナー。臨場感あっていいです。
構成作家・近田(森本晋太郎)がオンエア中にストレッチ。音響担当の遠山(ヒロコヒー)に(おそらく)にらまれて椅子におとなしく座るの好きだなあ。短い時間で登場人物の人柄が伝わってくるんですよね。
相談者と同じく東京生まれのトキコ。彼女の父・蒲原哲也(國村隼)と母(富田靖子)にとっての青春と街の記憶はダントツで銀座。
両親と自分にとって特別な街のタウン誌『銀座百点』に自分の文章が載ったら、やっぱり店舗から直接手に取ってみたくなるよね。嬉しいし懐かしいもの。
とはいえ、ドイツ製の時計が418万円と聞いて、びっくりして無言で店を立ち去る哲也の気持ち、わかります。価格帯からして別世界にきたよ感がすごいのも銀座です。
コラム二ストでラジオパーソナリティーでもある、トキコの洞察力はここでも冴えています。
高級店での客の扱いはこれまでに使った金額で決まる、ある意味で露骨な世界です。ここでは継続性がないただの闖入者として扱われるふたり。
彼女の推測を裏付けるように、裕福な生活を送っているだろう老夫婦と孫へ対する店員の扱いは対照的。
他者の上に自分や身近な人間の可能性を重ねてしまうのは、仕方ないこととはいえトキコの気持ちを想像するとやりきれない。
”もしも、私が結婚して子供を産んでいたら。今頃はあのくらいの(老夫婦の孫)年齢になっていただろうか?”
”もしも母が生きていたら。あんな風(老婦人)に素敵に年齢を重ねていただろうか。”
”もしも父の商売が失敗せずにうまくいったら。私たちは豊かな暮らしをつづけていただろうか。”
”もしも”に埋め尽くされようとしていたトキコに哲也が声をかけてきたときはほっとしましたよ。
いやいや、形にならなかったもの、亡くなったもの、思い通りにいかなかったものだけがすべてではありませんと諭されたような気持ちになったのが飲み屋でのシーン。
哲也がトキコに語る、「真の」両親の銀座話では、照明がトキコと哲也に当たり、店内の喧騒は消え、アパートの鍵の音が印象的に使われます。
一度は別れた元彼・哲也に自宅アパートの鍵だけ渡してさっさと職場に向ったトキコのお母さん、かっこいいなあ。
なるほど、トキコの母は亡くなり、あったかもしれない人生の可能性は消え、老舗の蕎麦屋は閉店した。それでも、トキコの母は死してなお一家の潤滑油として、トキコと哲也を励まし続けている。
簡単に言葉にはできない感覚にそっと触れてくる表現がとても心に沁みます。
場所や風景は人の記憶と結びついている。それが次々に表情を変えていく街を舞台に、なんともほろ苦いながら、かすかな救いもあった回でした。
飲み屋で偶然にあった岩井勇気さんは今後トキコどのようにからんでくるのでしょう。次回も期待!
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(c)「生きるとか死ぬとか父親とか」製作委員会