「大豆田とわ子と三人の元夫」第10話までネタバレありで魅力解説|「大豆田とわ子は最高だってことだよ」
第10話あらすじ&感想
第10話あらすじ
「好きになれる自分と一緒にいたいし、一人でも幸せになれると思うんだよね」――。考えた末、四度目の結婚には踏み切らず、一人で生きていく道を選んだとわ子(松たか子)。八作(松田龍平)や鹿太郎(角田晃広)、慎森(岡田将生)ら3人の元夫との関係は相変わらずで、しろくまハウジングも買収前の平穏な日常を取り戻していた。
ある日、オペレッタでとわ子は初恋の相手・甘勝岳人(竹財輝之助)と偶然再会する。親しげに思い出話に花を咲かせる甘勝に嫉妬した鹿太郎は、抑えきれない感情を共有するために慎森に電話をかけるが…。
それからしばらくして、とわ子は自宅に置いていた亡くなった母の荷物が詰まった段ボール箱を偶然見つけ、中から旺介(岩松了)と離婚する前の母が書いた一通の手紙が出てくる。母の思わぬ一面に動揺するとわ子だったが、同時にこの手紙を出せなかった胸中を思って複雑な気持ちになる。すると、同じく手紙に気付いた唄(豊嶋花)が、送り先の人物に会いに行こうと提案する。
第10話感想
終わった、終わってしまった……。毎週火曜、欠かさずこのドラマを楽しみに観ていた方も多いことだろう。まさに「とわ子ロス」状態だ。
冒頭は松たか子によるタイトルコールで始まり、最後も松たか子による「また来週!」の呼びかけで終わっていた本ドラマ。「ありがとう!」で締め括られた最終回、どれだけの人が画面に向かって「こちらこそ、ありがとう〜!」と応えただろう。私は声に出して手まで振った。それだけに、ロス感が強い……!
最終回だからか、今回は「過去からの投げかけ」とも言えるモチーフが多く見受けられた。第1話で登場した詐欺師が逮捕されたというニュース(とわ子は被害に遭いかけたところをギリギリで免れた)、中学生の頃の初恋相手との再会、おそらく小学生のとわ子が書いたであろう「一匹オオカミ」の書初め、そしてとわ子母の荷物から出てきた映画の半券やラブレター……。
過去から発掘されたラブレター、とわ子母が好きな人に宛てた手紙だった。とわ子父ではなく「マーさん」という別人に向けて書かれたものだ。出されなかったラブレターを前にしたとわ子と娘の唄は、とわ子母が好きだった人に会いにいくことを決める。
唄は西園寺くんという医者志望の彼と付き合っているが、その交際の仕方はとても不健康に見えた。「西園寺くんを支える人になったほうが生きやすいでしょ?」と言いながら、唄は自身の夢を諦めてひたすらに彼を支える人になろうとしている。見かねたとわ子は西園寺くんに対して態度を嗜めようとするも、失敗。結果、唄と西園寺くんは別れることになってしまう。
個人的には、こんな彼とは別れて正解! と思ってしまうが……唄にとっては心から好きな相手だったのだろう。マーさんに会いに行こうと提案したのも唄からだ。
「おばあちゃんが生きた人生は、私の未来かもしれないんだよ」
本当に好きな人と結ばれない人生。自分に嘘をつき、言い訳をしながら生きていく人生。唄は、現在の自分の心境と、とわ子母の生涯を重ね合わせたのだろうか。今のマーさんに会い話を聞くことで、当時のとわ子母が何を思っていたのかを知りたいと思ったのかもしれない。
マーさんは、女性だった。
とわ子母が想いを寄せていたのは、女性だったのだ。これだけジェンダーにまつわる知識が浸透し始めている時代に、私はまだ「母が昔、好きだった人」という言葉から男性の姿を想像してしまう。そんな自分に嫌気と想像力のなさを感じながらも、とわ子母とマーさんの消えない絆を感じ胸があたたかくなった。
とわ子自身も、マーさんに会い話を聞いたことで「母は自分たち家族を選んで不幸になったのではなく、きっと幸せだった」と思うことができただろう。母の幸せだった姿を確かめたとわ子と、自分の未来は自分で選びとっていくことを決めた唄。ふたりがマーさんに会うことは、きっと必然だった。マーさん宅の窓辺に飾られているバレエシューズは、今もそこに在る思い出の力を教えてくれる。
最後は最終回らしく、とわ子と三人の元夫たちが飲んだり食べたり人間ボーリングをしたり(?)しながら終わっていく。一人で網戸を直せるようになったとわ子は、八作を選んで、かごめを含めた三人で生きていくことを決めた。きっとそれは、側から見たら一人で生きているのと何ら変わらない。それでも、彼女は自分で決めた生き方を貫くのだろう。
「僕たちはみんな君のことが好きだってこと」
「大豆田とわ子は最高だってことだよ」
八作が、私たちの想いを代弁してくれた。これからも何度も繰り返しみたいドラマであることは確実だ。三人の元夫たち、ありがとう! とわ子、ありがとう!
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