「青天を衝け」実業<算盤>編、感想・解説集|第32話から最終回<ネタバレあり>
第33話「論語と算盤」感想・解説集
第33話のあらすじ
第一国立銀行の大株主、小野組が放漫経営で倒産する。小野組に無担保で多額の貸しつけをしていた第一国立銀行も、連鎖倒産の危機に陥る。さらに、三野村利左衛門(イッセー尾形)率いる三井が、この機に乗じて第一国立銀行を乗っ取ろうとする。銀行を守るため、栄一(吉沢亮)は、三野村との一世一代の大勝負に出る。一方、喜作(高良健吾)は、主要な輸出品である蚕卵紙(さんらんし)を値崩れさせようと、横浜の外国商館が口裏を合わせて買い控えをし始めたことに憤慨していた。
第33話の感想
倒産の危機に陥った第一国立銀行。小野組に貸し付けていた担保を返させたことでなんとか首の皮一枚つながったが、今度は三井組が第一国立銀行を乗っ取ろうと画策してきた。栄一は大蔵省に「西洋式銀行検査」を依頼。第一国立銀行と三井組、どちらがより銀行の在り方として正しいか判断してもらう大勝負に出る。結果、栄一側の勝利! 三井組への特権は剥奪され、なんと栄一が三井組頭取に就任することに。
一方、輸出品である蚕卵紙(さんらんし)が買い控えられている問題が勃発。参議兼内務卿である大久保利通(石丸幹二)は「経済のことはまったくわからない、国を助けると思って味方になってくれないか」と栄一を頼る。
最初こそ渋っていた栄一だが、彼の脳裏にはおそらく、静岡にいる慶喜(草彅剛)や逝去した父母の姿が浮かんだに違いない。人のため世のためと思い尽くしたが、結果、民から誤解され報復を恐れる身となった慶喜。”自分よりも人のため”を常に体現した父と母。
「大事なのは、民だ」
慶喜や父母の姿を見ながら己の人生を歩んできた栄一にとって、行動原理はすべて民のためである。「おかしれえ、やってやりましょう」と請け負ったはいいものの、外国の蚕卵紙買い控えなど、どのように対処するのか……?
疑問に思ったが、なんと栄一は、政府に残っていた売上8万5000円で蚕卵紙を買い集め、貿易商がいる横浜で焼き捨ててみせた。
「10年越しの、俺たちの横浜焼き討ちだい!」
喜作(高良健吾)の叫びが響く。買い控えるのなら、その代わりに売り控えてやろうじゃないか。そんな作戦に出た栄一たち。数年越しに叶った間接的な”横浜焼き討ち”に、胸が熱くなった視聴者も多いのではないだろうか。思いは潰えることなどない。ここぞという時に、大きく実るものなのだ。
買い控え問題が解決するとともに、栄一にのしかかる頭取としての重荷。幼い頃から教えを得ていた「論語」を胸に、大海を進んでいく覚悟を静かに決める。
三井組は言った。「どんどん金中心の世になってきた。開けてはならない扉を開けたのかもしれない。どんな世になりますかねえ」と。
その答えは、現代にあらわれているのだろうか?
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