<舞いあがれ!・子供時代編>第1週目~3週目の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第6回のレビュー
第2週「ばらもん凧、あがれ!」(演出:野田雄介)はまず、第1週のふりかえりからはじまります。舞(浅田芭路)は母・めぐみ(永作博美)の故郷・五島列島の祖母・祥子(高畑淳子)に預けられます。母と分かれて帰り道、ばらもん凧に出会います。「元気もの」という意味で、子供の成長を願って上げるものだそうです。
舞も上げてみると、最初はいい感じにあがっていましたが、落としてしまって……。
しゅんとした舞のアップから、タイトルバック「舞いあがれ!」に。
この一連で、このドラマが、しゅんとなっても顔をあげて空を見ようという気持ちに溢れているように感じます。アヴァンからタイトルバックに入る流れがスムース。
落ち込んだ舞は家に戻って、いかに落ち込んでいるか祥子に伝えるべく、布団に頭を隠します。「頭隠して尻隠さず」という言葉の見本のような動作でした。悩んだ顔のアップよりも、こういうちょっとした動きで表現するのは良いことです。
祥子も、木戸(哀川翔)が魚をもって訊ねて来て、めぐみだけ帰したことを怪訝に思われたとき、魚の鱗をがりがり取る動作と音から、余計なことを聞かないでという声が聞こえてきそうでした。
いよいよはじまった祖母と孫の生活。これまで食事の後片付けをしたことのなかった舞は、祥子に自分で片付けるように言われ、見様見真似でやりますが、お皿を割ってしまいます。
ごちそうさまと食卓を離れたときは、椅子をテーブルの中に入れないまま。靴を脱いできちんと揃えていたのは、母の監視下だったからでしょうか。
朝、舞は寝坊して学校に遅刻します。祥子は起こしてくれません。
髪ぼさぼさで登校した舞は休み時間に前髪に水をつけて整えます。水道水で整えただけでこんなにきれいになるとは思えませんが、それはそれとして、舞ちゃんのビフォア、アフター。つやつやボブはブローの賜物であることがわかりますし、めぐみの前髪のくしゃくしゃした感じは、母と子のDNAを感じさせます。
髪をきちんとブローしてよそいきの顔をしていた子が、田舎でその仮面をどんどん剥がされます。
なんにもできないうえに発熱する舞、でも甘やかさない祥子、ともすれば、祖母に厳しくされてしんどく見えそうな場面ですが、それほど重く見えないさじ加減が絶妙です。祥子が無理なことをやらせているわけではなく、ごく当たり前のことをやるように教えているだけだからでしょう。
学校でも先生は遅刻をさほど咎めないし、生徒たちもからかうけれど、意地悪な感じがありません。理想的なバランス。秩序と気遣い、当たり前のことが当たり前に描かれています。
五島列島弁かるたで遊ぶ場面や、熱の出た舞に祥子がむいてくれる柑橘、耳にやさしい音、目にやさしい瑞々しい果物やふかふかの布団……なにげない日常が心地いい。
当たり前の日常はじつは簡単なことではありません。それなりの忍耐や努力や思慮のうえにそれは成り立っています。私たちがやさしさや美しさや丁寧さを見て気持ちよく感じるのは理想を実現しようとつとめている心に呼応するからです。
当たり前をやろうして時にはめぐみのように塩梅を測れず自分も他者も苦しめてしまうこともあります。それでも理想を求めようともがいている気持ちがわかるから、めぐみに心を寄せることができるのです。
できないことばかりと悩んでも、できることを探せばいいと祥子は舞に語りかけます。できることを探す心がけにも魂が宿ります。
【朝ドラ辞典 子役(こやく)】朝ドラは本役が登場する前にその子供時代が描かれることが多い。子供時代は重要で、そのときの体験を原点にしてヒロインは成長していく。たいてい子役時代は1、2週間で本役に切り替わるが、序盤、優秀な子役の熱演によって人気を得ることが多く、ドラマの後半、別の役で再登場してファンを喜ばせることもある。
※この記事は「舞いあがれ!」の各話を1つにまとめたものです。
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