<ブギウギ ・戦後編>16週~19週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第83回のレビュー
「腹ボテカルメン」として好評を博した「ジャズ・カルメン」。愛助(水上恒司)は一目見たいと願ったものの、体調がおもわしくなく、断念することに。
自分の体は自分が一番よくわかっていると、以前、豪語していた愛助ですが、わかってるのかわかってないのか。上京して観劇などできるはずのない体調の悪さに気づいているから最後に一目見たいのか、まだ絶対に治ると希望を失っていないのか。
医者は「辛抱のしどころです」とだけ。
いずれにしても、愛助はスズ子(趣里)に心配をかけないように、風邪を引いてしまったのでいけなくなったとウソの手紙を書きます。
すごく辛いのに、弱音を吐かず、明るく振る舞う愛助が切ない。
スズ子のほうも、本当はすごく不安なのに、愚痴めいたことを手紙に書くことはいっさいありません。
スズ子と愛助の思いやる心が美しい。
感染症というと、令和のいまだとコロナ禍が思い浮かびますが、いまは、リモートでお互いの顔や声を確認できるし、なんなら演劇だって配信で見られます。
昭和は人と人との物理的距離がとても遠くて、不便でした。それと比べて、いまはとてもありがたい時代であります。
「會いたかった」「會いたかった」と手紙に書くスズ子がかわいらしくて、三十代のおばちゃんにはまったく見えず、とても若く思えます。恋をしているときは、年齢なんてないというエイジレス表現なのでしょうか。
ジャズ・カルメンの衣裳も、バレエの発表会のようにも見えなくもないのは、勝手な想像ですが、若い視聴者に感情移入してほしいと思ってのことなのかなと思います。それには趣里さんはぴったりです。
少女のような趣里さんに対して、アダルトな魅力を振りまくのが、茨田りつ子(菊地凛子)です。
千穐楽の楽屋にふいに現れ、「出た」とスズ子はおばけのような扱いをします。そこでりつ子は衝撃の告白を。
じつは、出産経験があり、産んだ子供は実家にあずけていると言うのです。
子供の父親は秘密。茨田りつ子、ミステリアス過ぎます。
これはりつ子のモデル・淡谷のり子さんの実話に基づいた設定のようですが、戦前戦後の日本はなんだか混沌としているのを感じます。東北の裕福な家に生まれながら没落し東京に出てきて歌手を目指した淡谷さん。ヌードモデルをやってお金を稼ぐこともあり、男性に酷い目にあったこともあるようです。いったいどんな恋をして、子供を産むに至ったのか。
茨田りつ子は、歌のために、子供を手元におかず実家にあずけているという、業を見せます。
子供を自分の手で育てていないことが唯一の後ろめたさだと自覚をしているりつ子の話を、羽鳥(草彅剛)は朝ドラあるある「立ち聞き」して、りつ子の歌の魅力の源泉にひとりナットクしたようです。
スズ子は、子供が生まれたらどうするのでしょうか。
目下、愛助は、籍を入れようと頑張っているわけですが……。
手紙は、ついに、封書からハガキになってしまい……。
このへんを掘り下げていくと、ものすごく重々しい話ですが、「ブギウギ」では重苦しさを極力取り除き、おそばのようにのど越し良く飲み込めるドラマになっています。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
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