<ブギウギ ・戦後編>16週~19週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第76回のレビュー
「舞臺よ!踊れ!」の本番がはじまり、拍手喝采を浴びました。愛助(水上恒司)や小夜(富田望生)が客席ですごく嬉しそうに見ている表情が良かった。ふたりとも、心からスズ子のステージを喜んでいるように、演技なのに、その瞬間、はじめて見たように反応していて、空気を上げていました。
劇の流れがスズ子の新曲「コペカチータ」のためのものという感じで(セット替え衣裳替えも、ど派手)、これだとスズ子中心の作品としか思えません。なのになぜ稽古のとき、脇役の人たちはスズ子を立てずに威張っていたのでしょう。
きっと彼らにも矜持があるので、人気歌手が主役的な役で来ても、媚びないということなのかも。
タナケン(生瀬勝久)のモデルとは公言されていませんが意識はしているであろうと思われる、喜劇王エノケンは浅草の演劇ですが、この劇中劇はNHK大阪局が作っているからか、どことなく吉本新喜劇調に見えました。気のせいでしょうか……。
あとでタナケンが「いいねえ西の言葉は」と言っているのは、生瀬勝久さんが関西出身なので実感がこもっています。
スズ子役の趣里さんは関東のかたで、関西弁をがんばってしゃべっていて、生瀬さんは関西出身なのに
東京の演劇人の役を演じているという、不思議なことになっています。
”自分らしく”がテーマの第16週「ワテはワテだす」ですが、実際演じている人達は、本来の自分と違うものをしっかり演じているのです。
スズ子が自分らしく大阪の言葉で演じきって、得意な歌を歌って踊って、新たな扉を開いたとき、小夜はサム(ジャック・ケネディ)と共にアメリカへ旅立ちます。
別れ際、スズ子は小夜ちゃんを「ほんまの家族」と言い、「ほんまにええ子」と大肯定していましたが、実際のところ、小夜ちゃんはとくに何もしてない、むしろ何もできない子でした。ただ、明るくバイタリティーがあること、たまに、大事なときに優しくあたたかくスズ子を慰めてくれること、など、素朴な魅力がありました。たぶん、スズ子にはそれで良かったのでしょう。
スズ子は大阪のはな湯で、ほぼ何も役に立っていないけど愛されていたアホのおっちゃんとか、一応働き者だけど素性のわからないゴンベエとか、何もしないで夢ばかり語っているお父ちゃんとかと共に暮らしてきたので、一般的に役に立つとか優秀とかいうことに重きを置いていないのでしょう。
こういう心の広さは大事だし、無償の愛を声高にメッセージ的に言わないのも、「ブギウギ」の良さだと思います。
さて、「ワテはワテ」と認識したスズ子ですが、いよいよ愛助の母トミ(小雪)が結婚をゆるしてくれそうになったものの、その条件が、スズ子のスズ子らしさを奪うようなもので……。
スズ子は、愛を取るのか、仕事を取るのか――。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
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