<ブギウギ ・戦後編>16週~19週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第84回のレビュー
「ジャズ・カルメン」が成功して3ヶ月、ということは妊娠9ヶ月。スズ子(趣里)のお腹もかなり大きくなりました。
依然として、愛助(水上恒司)からはハガキが来るだけで、なかなか会えそうにありません。
ハガキの文面も日に日に短くなっていきます。
心配でならないスズ子。「なんやおかしい」と感じて、大阪に行こうとしますが、いつ産気づいてもおかしくない時期なので、医者は許可してくれません。
ハガキしか愛助の様子を知る手立てがないので、大阪に行ったきり、いつかいつかと先延ばしにされたまま、という状況は、もしかして籍を入れるつもりはなくてこのままなし崩し的に関係性を終わらせてしまう作戦なのでは?と不安を感じてしまいそう。
でも、愛助はほんとうに体調が悪化していて、そんな姿をスズ子に見せたくないと思っているのです。心配させたらお腹の子にも悪いと。
懸命に元気に振る舞いますが、文字は乱れるし、文面は短くなるしで、ごまかしようもないところがつらい。水上さんが、健康的なかたであることが、このとき、逆に効果的な感じがします。もともと病気がちな人はたぶん、自分の弱さを受け入れていますが、健康的な人ほど、ふいに弱っていく自分を他者に絶対に見せたくないと思いそうです。
愛助の葛藤は、健康的な水上さんが演じているかから、逆説的に切実に伝わってくる気がします。
スズ子のためにも、子供のためにも、元気になりたい。病気が回復したら体を鍛えて、親子3人で楽しく暮らしたい。そんな愛助の願いが胸を締め付けます。
東京と大阪、離れている間に、お腹はすいかのように大きくなっていきます。
思い余って、麻里(市川実和子)に相談に行きます。この日は羽鳥(草彅剛)がいなくて、ゆっくり、
女同士の話しができました。
はじめての子供・カツオがお腹にいたとき、羽鳥は音楽のことばかり考えていて、麻里は孤独でしたが、お腹の子が支えだったという話が、スズ子には支えになりました。
丹前に、愛助の無事を祈るスズ子。丹前とお腹を触れ合わせる仕草に、見ていて涙が出そうになりました。
子供ができたけど、お相手は病気で……というのは、スズ子のモデルの笠置シヅ子さんの実話です。
こんな悲しい話が実際にあったと思うと、つらくなります。そして、今、残っている笠置さんの写真や動画は、底抜けに明るい笑顔のものが多くて、こんなふうに笑っている人に、こんな悲しい体験があるのだと思うと、複雑な気持ちになりますし、笠置さんはすごい人だなとも思います。
潔癖で、恋愛経験も少なくて、仕事一筋だった笠置さんの、唯一の本気の恋だったとか。それもすごい。だからこそ輝くのでしょう。
必死にハガキを書いて、また咳して、血を吐いて……の場面の絶望感がハンパなかった。
※この記事は「ブギウギ」の各話を1つにまとめたものです。
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