<虎に翼・家庭裁判所編 >10週~14週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第53回のレビュー
家庭裁判所を作るためには、少年審判所と家事審判所を合併させないとなりません。家事審判所所長・浦野(野添義弘)と少年審判所所長の壇(ドンペイ)は、少年家事裁判所、家事少年裁判所とどちらの名前を前にするかで揉めます。いつでもどこでも面子にこだわる人たちはいるのです。多岐川(滝藤賢一)は会議中、いつも居眠り。でも、ひそかに浦野と壇とやりとりを行っていました。
寅子(伊藤沙莉)も誘われて参加しますが、単なる飲み会で唖然。
でもその席では、浦野と壇は陽気に笑っています。これは多岐川の作戦なのかもしれません。令和の時代、飲ミュ二ケーションは避けられていますが、良いこともあったりして?
多岐川の補佐をしている汐見(平埜生成)はお酒が飲めないのに間違って飲んでしまい、自力で帰るのが困難になり、多岐川と寅子が送ります。なんと、多岐川と汐見は同居していて……。
さらに、前から、多岐川が家に「香子ちゃん」というすてきな人がいることを匂わせていたのですが、その香子ちゃんとは、ヒャンちゃんこと香淑(ハ・ヨンス)で……。
国に帰ったはずのヒャンちゃん。日本にまた戻ってきていたことも驚きですが、妊娠しているようでさらに驚き。
世間は狭い。宿命で結ばれた人たちは、ちょっとずつ引き合っている感じがします。
先週の金曜日の花岡(岩田剛典)の死の話からの「つづく」、月曜日のよね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴)の再会。火曜日の多岐川登場、そして水曜日のヒャンちゃん、と毎日イベント目白押し。どんどん、球種を変えて投げ続ける、ものすごい腕力のある構成です。
脚本家の吉田恵里香さんは、X(旧ツイッター)で毎日、その回のイメージに合ったイヤリングをアップしていて(たとえば、昨日はスルメイカ、今日はロシアンティーをイメージしたジャムつきパンにカップのリング)、筆者は毎日楽しみにしているうえ、どんだけイヤリングを持っているんだ?と驚いているのですが、この違ったイヤリングを毎回、アップする惜しみない労力とサービス精神こそ、彼女の脚本の真髄であると感じます。
そして、そのサービス精神は、多岐川に「東京ブギウギ」を歌わせます。
「東京ブギウギ」――
前朝ドラ「ブギウギ」でヒロイン鈴子(趣里)が歌って踊って盛り上げた大ヒット曲であります。ヒロインのモデルの笠置シヅ子さんと、寅子のモデルの三淵嘉子さんは同じ年生まれ。寅子は鈴子が入団した梅丸少女歌劇団のファンでもありますので、「東京ブギウギ」も笠置さんではなく鈴子が歌っている世界線ではないでしょうか。ラジオから流れるのではなく、多岐川に歌わせているのが巧み。
ひじょうに目配りの効いた構成で、たとえばこの回、寅子が家庭裁判所設立が暗礁に乗り上げたら、裁判官になるチャンスを逸してしまうと焦り、多岐川に詰め寄ったとき、「バカタレが!」と一喝されます。
寅子の自分本位な考えを叱ったのかと思いきや、そうではなく。
「そんなもやもやしていていい仕事ができるわけないだろう」と多岐川の焦点はそこ。いまどきの若いものは……とぼやきながら、直接言いにくるだけましなのかと独り言で考え直し(多岐川ってかなりマイペース)、家庭裁判所(ファミリーコート)の理念を伝えるため、ライアン(沢村一樹)のところへ連れていくのです。
寅子はそこでようやく、家庭裁判所を作る意味を知るのです。
この場面で、寅子が「お言葉ですが」と花咲舞みたいなことを言うのも、サービス精神なのでしょう。
明日は何が起こるか、楽しみです。
※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。
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