<虎に翼・家庭裁判所編 >10週~14週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第56回のレビュー
ぐっと進展。第12週「家に女房なきは火のない炉のごとし?」(演出:安藤大佑)のはじまりは、昭和24年1月、家庭裁判所ができ、寅子(伊藤沙莉)は晴れて裁判官になれました。正しくは判事補です。3が日も開けないうちに、多岐川(滝藤賢一)が電報で寅子を家に呼び出します。
訝しく思いながら訪ねると、褌一丁の多岐川の水垢離を手伝わせられます。令和だったら、時間外労働なうえセクハラにも当たりそうです。
多岐川は水垢離しながら家庭裁判所の基本性格を諳んじ、それを汐見(平埜生成)が粛々と書き留めます。
あんなに寅子と会いたくないと拒絶していた香子(ハ・ヨンス)が彼女を玄関で出迎えたのはなぜ……。これにはもしかして、ほんとうは香子は寅子に会いたい、その気持ちをおもんばかって、多岐川がわざと寅子を呼び出した可能性もあります。
4日、仕事はじめ。星最高裁長官(平田満)が直々に、寅子に辞令を渡します。判事補と家庭裁判所の事務次官の兼務となりました。
兼務は大変そうですが、寅子は念願の裁判官になれたのです。
星は「くせ者3人に引けを取らないくせ者の君ならば、きっとねじまがってしまった子どもたちとりっぱに対峙してくれるだろう」と期待をかけます。
くせ者3人とは、多岐川と桂場(松山ケンイチ)と久藤(沢村一樹)です。
さっそく家事裁判所の面々は、街にあふれる浮浪児を視察にいきます。
子役がたくさん投入され、渾身の戦後の街描写。
そこで、寅子は、小橋(名村辰)の財布をすった少年を追いかけます。
少年は、元締めらしき道男(和田庵)という年かさの少年にお金を渡し、寅子はさらに道男を追いかけます。そして、たどりついた先はーー
カフェー燈台があった場所。
そこには「轟法律相談所」という看板がありました。
なかにいたのは、よね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴)です。感動の再会――
にはならず、よねはぶすっとしています。まだ寅子に怒っているみたいです。
整理しますと、かつて、寅子が妊娠し、仕事との両立に苦しんだ結果、弁護士事務所を辞めたとき、よねが「二度と戻ってくるな」と、たもとを分かったのです。
よねがなぜあのときあんなに怒ったのか、いまひとつわからないのですが、男装しながらがんばる自分と、結婚しないで頑張る寅子の間に共感を覚えていたところ、寅子は結婚して妊娠して、弁護士を辞めるという本末転倒になったことを悔しく思ったのではないでしょうか。
戦争も終わって、水に流してもよさそうなものですが、なぜか復帰して裁判官になっていることが悔しいのかもしれません。よねはまだ弁護士にもなれていないのですから。物語とはいえ、よねがちっとも弁護士になれない役割を担わされているのは辛いですね。
稲垣(松川尚瑠輝)、小橋も合流し、法学部の同窓会状態に。
わいわい騒いでいる大人たちの傍らで、しらけた顔の孤児たち。寅子たちが彼らを導いていくことになるのでしょうけれど、エリートの法学部同期の麗しい関係と、戦争で何もかも失い肩寄あって生きている子供たちとの対比が残酷に見えました。
※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。
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