<虎に翼・家庭裁判所編 >10週~14週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第70回のレビュー
穂高(小林薫)に啖呵を切った翌日、寅子(伊藤沙莉)のもとへ、穂高が謝罪に来ました。穂高、一晩中、考えたのでしょうか。古い人間である穂高とは違って、既存の考えから飛び出し人々を救うことができる寅子を、「心から誇りに思う」と言います。令和における「リスペクト」を、穂高も身につけました。すばらしい。
そうそう、寅子はこういうのを待っていたのでしょう。
ようやく寅子は、尊属殺の反対意見を読んだことを伝えて、「先生の教え子であることは心から誇りに思っています」と返します。でも、昨日の穂高のお別れ回に水を差したことは決して謝りません。なんて尊大な人なんだ寅子。
穂高は無理してここまで来たようで、もう立っているのも辛いのでしょう、椅子に座り、「よかった、最後に笑ってすっきりした顔でお別れできそうで」と弱々しくほほえみます。
そして、最後に言った言葉がこれ。
「佐田君、気を抜くな。君もいつかは古くなる。つねに自分を疑い続け、時代の先を歩み、立派な出涸らしになってくれたまえ」(穂高)
穂高は最大限、これからの寅子のために折れに折れました。でも「雨だれ」理論は曲げていません。言い方を変えただけです。寅子はいまの自分を誇りに思ってもらって嬉しいので、いつか自分も「出涸らし」になる――雨だれをお茶に例え変えただけなのに、気に障らないのです。
穂高にしてみたら、女性が活躍できなかった時代に、法曹界に単身乗り込み、男性ばかりのなかでよくやってるとは思うものの、実績がないのだから、褒めようもなかったのではないかと思うのです。
そこが、現実的な実力主義でしょう。
寅子は穂高に認めてもらえ気を良くして、親権問題に取り組みます。
ここまで口を閉ざしてきた栄二(中本ユリス)に、両親にこだわる必要はない、両親に任せたくないと言います。すると、栄二は「どっちとも暮らしたくなかったら」と口を開き、父の姉・勝枝(小林美江)の名前を出します。
子供が頼る相手は親である必要はない、という寅子の画期的な考えによって、親権問題は解決しました。そのとき、家事部と少年部が協力したとナレーション(尾野真千子)。
その頃、穂高先生は亡くなります。法曹界のラウンジではなく、なぜか竹もとで、教え子たち(久藤、多岐川、桂場、寅子)が集まり語り合います。
桂場(松山ケンイチ)はかなり酔っていて、それだけ穂高が好きだったことが伝わってきます。
穂高イズムを継いでいくのだと酔いながら語る桂場。その穂高イズムとは。
寅子「理想のために虎視眈々です」
桂場「寅子が虎視眈々?」
そのあと、桂場や寅子が感動した穂高の尊属殺事件への反対意見が、小林薫さんの声で読み上げられます(落ち着いた名調子)が、そこには「理想のために虎視眈々」は入っておらず、穂高がこの一文を書いたかはよくわからないのですが(筆者が見逃しているかもしれません)、もしそう書いたとしたら、寅子のことを思って書いたラストメッセージのような気もします。
こんなに期待されているのだから寅子、がんばらないと。
※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。
→元記事はこちら
→目次へ戻る
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)NHK