<ちむどんどん・独立編>96回~115回までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第97回:「悪いのは和彦」
和彦(宮沢氷魚)が新聞社を辞めたことを責める重子(鈴木保奈美)。「離婚しなさい」と言ったのは、暢子(黒島結菜)を心配してのことでした。
子供ができたと知ると、「夫が身重の妻をほうりだして好き勝手に日本中飛び回るなんて」とたしなめます。彼女が夫・史彦(戸次重幸)にそうされていたのでしょうね。
この感じだと暢子が育児とお店を立派に両立して、和彦のライフワーク(沖縄)を支えるようになるのではと想像が働きます。
和彦は新聞社で暢子と再会したときは、すてきに成長したように見えましたが、
そのあと、いいところがあまりありません。
記事の主題である質問を取材の終わりについでのようにしたり、6,7年経っても、取材の心得が身につかず、デリケートなことをずけずけ聞き出そうとしたり、新聞記者にもかかわらず、事件性の高い現場にのこのこ行って巻き込まれ、
会社に迷惑をかけてしまう。
そしてなぜか、辞めた新聞社で、田良島(山中崇)に仕事先を紹介してもらっています。こんなことあるかなあ……。売り込みしていたカフェバーみたいな場所を流用しても良かったのではないでしょうか。
ただ、こんなことありえないと思っても、辞めた会社の人が親切に仕事を紹介ーーしかも古巣の会社で、ということがありえてもいいのではないかとも考えられます。ありえない は いつの間にか刷り込まれたことであって、もっと自由に柔軟であってもいいですよね。盗みと詐欺と殺人以外は、あってもいいのかもしれません。
なんでもありのようだった暢子も、引き抜きはしてはいけないと自覚しています。
新店舗の料理人を探すにあたって、フォンターナの二ツ橋(高嶋政伸 たかははしごだか)を引き抜くというアイデアをあまゆの順次(志ぃさー)が口にするのも、アウトな気がします。
思うのは自由とはいえ、お世話になったフォンターナから引き抜きはあってはならないでしょう。なんで、こんな会話をわざわざ……
食い逃げもあってはいけないことのひとつでしょう。
沖縄なまりの強い、料理人としての腕も期待できない人(諸見里大介)や、魚さばきの得意な高齢者(元木鴈二朗)などしか面接に来なくて、困っているところへ現れた食い逃げ犯はーー
ありえないは、重子が、店名「ちむどんどん」を生まれてくる子供の名前と勘違いするところ。「LIFE」的なコントと思えばあっていいですが、房子(原田美枝子)のパートはシリアスで(妹の流産)、15分のなかで重子のコントと房子の深刻が並行して描かれるので、ついていきづらいのです。こういう番組ってなかなかないです。見せ方は違いますが、どちらも若い暢子と和彦をそれぞれの表現方法で心配しているんですよね。
「禍福は糾える縄の如し」「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」という人生を表現する挑戦なのかもしれないです。でもある意味商品(受信料でできている)として世に出すにはもうすこし練ったものを見せていただきたい。
優れたドラマとは何か。NHKの番組の基準とは何か。朝ドラとは何か。正しさとは何か……。
「ちむどんどん」は問いかけているようにも思います。
「ちむどんどん」のような実験を国民的ドラマ枠・朝ドラでやるのはありえない。深夜やBSでやるべき。と思ったとしても、何を根拠にそう思うのか。「ちむどんどん」を見ていると既存の価値観がどんどん崩壊していきます。
※この記事は「ちむどんどん」の各話を1つにまとめたものです。
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